2006年12月研修記録
★アンチエイジング実現のための高血圧治療の考え方
・アンチエイジング(抗加齢)医学会は2001年に研究会として発足し、2003年に学会として改組後、現在は約6000名の会員からなる団体である。この団体の目的は老化の原因を克服することにより、老化を治療することを目的とし、最終的には健康長寿を目指す医学である。
・アンチエイジングでは、患者ごとに筋年齢、血管年齢、神経年齢、ホルモン年齢、骨年齢のそれぞれの老化度を判定し、老化を進行させる危険因子(免疫機能、代謝機能、酸化ストレス、心身ストレス、生活習慣)を取り除く。
・「人は血管とともに老いる」といわれるように、加齢においては血管機能の障害や低下が大きなポイントである。血管機能障害は最終的には心筋梗塞などの臓器障害を引き起こすため、酸化ストレスを抑制することは、血管年齢を若く保つためにも極めて重要である。酸化ストレスはアンジオテンシンⅡが関与している。
・骨粗鬆症と高血圧は一見無関係にみえるが、実は共通点が多いことが判明している。両者は加齢とともに発症率が増加することに加え、収縮期血圧が高いほど大腿骨の骨量が低下していることや、高血圧を合併していると骨折の頻度が増加することが明らかにされている。メカニズムとして、尿中カルシウム排泄の増加が考えられている。また、アンジオテンシンⅡは骨破壊を促進することが判明している。
・ARB製剤は降圧作用だけでなく、新規糖尿病の発生抑制効果(膵臓の保護作用)、抗酸化作用、認知機能改善作用、心筋繊維化抑制作用などが確認されており、臓器保護作用から臓器改善作用があると考えられる。
・高血圧患者の治療において、ARB製剤は早い時期から使用し、長期間使用することが重要であり、Ca拮抗剤は降圧効果が不十分な時に追加で使用するのが望ましい。
・老化のメカニズムの1つである肥満の状態では、活性酸素が発生しやすいことが知られている。肥満体では運動量の低下に伴い、骨量や筋肉量が減少するため若々しい身体を維持できなくなる。メタボリックシンドロームの予防においてもアンチエイジングは重要になっている。
・宇宙飛行士は早く老化すると言われている。無重力で生活すると、筋肉量が低下するためである。
・今年神戸で開催された日本肥満学会において、愛33宣言(美空ひばりのヒット曲にある愛燦燦が由来と思われる)が行われた。体重を3Kg減量し、ウエスト周囲径を3cm少なくしようとのこと。
・長生きの秘訣は腹八分目と言われているが、高齢で現在も活躍されている聖路加病院の日野原先生は、若い頃からカロリー制限をされており、必要量の2/3程度の摂取にされており、腹6~7分目が理想とのこと。
★オルメテック錠の最新情報
オルメテックの特徴は構造式にあり、AT1受容体(血圧を上げる)への結合にはカルボキシル基(COOH基)及びヒドロキシル基(OH基)の2つの側鎖(ダブルチェーンドメイン)が重要な役割を果たしている。ダブルチェーンドメインのメリットは強力にAT1受容体に結合し、レニン・アンジオテンシン(RA)系を強く抑制し、優れた降圧効果、持続する降圧効果、臓器保護作用がある。なお、他のARB製剤はダブルチェーンドメインがない。
最近のニュース:第一三共 アムロジピンとオルメサルタンの合剤がFDA承認された。