2008年2月研修記録
★プレミネント錠の薬理作用【万有製薬㈱学術部より】
・食塩とレニン・アンジオテンシン(RA)系は密接な関係がある。食塩摂取の少ない太古の時代においては、RA系は食塩を腎臓から失われないようにし、かつ、血圧を維持していた。現在は食塩の過剰摂取時代であり、RA系を抑制しても降圧が不十分であるケースがある。
・食塩摂取量とRA系は天秤の両端にある重りのような関係にあり、食塩摂取量が低下すればRA系が亢進し、逆に、食塩摂取量が増大すればRA系が抑制されて、血圧には大きな変化はみられない。したがって、減塩に伴って活性化されるRA系の作用を抑制すれば、大きな降圧が得られる。
・プレミネント錠はARB/利尿薬の合剤であり、RA系を抑制すると腎よりナトリウム排泄を促進する。利尿薬は体液量を減少させて降圧効果を示すが、一方ではRA系を活性化することにより、その降圧効果及びナトリウム排泄効果は弱減する。したがって、ARB/利尿薬配合剤はAⅡの血管収縮作用の阻止による血管拡張と利尿効果がともに増強され、両者の降圧効果が相乗的に発現する。一方、強力な降圧作用と利尿作用があるため脱水などに対する注意も必要である。
・プレミネントの相乗的薬理作用として、ニューロタンのカリウム上昇の副作用をダイクロトライドでカリウムを低下させるため、相殺される。また、ダイクロライトで尿酸を上昇させるが、ニューロタンで尿酸を下げる作用があるため相殺される。血圧は相乗効果があり、理想的な組み合わせである。
★認知症と血管リスク
・日本における認知症患者は約190万人になっており、高齢化が進む2050年には400万人以上になると予想されている。最近、脳血管性認知症よりもアルツハイマー型認知症が多くなっている。
・アルツハイマー病は加齢に伴って発症し、特に65歳以降その発症率は急増(性差では女性が多い)しており、社会的問題になっている。
・アルツハイマー病と高血圧は相関関係がある。高血圧患者において、未治療群と治療群(降圧剤を服用)と比較して、未治療群の方がアルツハイマーの発症が有意に高くなることを確認している。血管障害が関与していると考えられる。
・アルツハイマーの薬物治療として、現在使用できるのはアリセプトだけであるが、開発中の薬剤が3品目あり、その中の1品目は臨床試験が終了しており、申請中である。アリセプト及び開発中の3品目は根治治療ではなく、アルツハイマーの進行を遅らせる作用である。根治治療が期待されるのがワクチン療法である。
・アルツハイマー病は脳に蓄積するアミロイドβ蛋白が凝集して形成されたものである。ワクチン療法はアミロイドβ蛋白を抑制する方法であり、開発中である。
★利尿薬
・利尿薬は食塩感受性の高い高血圧患者(食塩を多く摂取している)には効果があり、1950年代より広く使用されている。脳卒中の発生や虚血性心疾患の発症を低下させる。
・利尿薬は尿を出す薬剤であり、その効果は、吸収、体内動態、各種疾患における腎血行動態や尿細管機能の変化、神経体液性因子の影響を大きく受ける。一方、利尿薬の種類により尿細管機能や腎血行動態に及ぼす影響に違いが見られる。糸球体濾過量(GFR)と血清クレアチン値を考慮して、利尿剤を使い分ける(ループ、サイアザイド、カリウム保持)必要がある。
・高血圧になると腎障害及び心血管障害の原因になるため、蛋白尿と微量アルブミンの測定は必須項目である。腎臓を守ることが生命を守ることである。
・家庭血圧における収縮期血圧が140mmHg以上は許されない血圧であり、早期に治療することが重要である。
薬剤師修行ファイルNo.061209:CASE-Jサミット報告書
2006年12月研修記録
★CASE-J(Candesartan Antihypertensive Survival Evaluation in Japan)に学ぶ
・日本人の平均寿命は伸びてきていたが、2005年は平均寿命が低下した。この原因は高齢者の肺炎と心血管イベントの増加である。
・CASE-Jは21世紀における降圧療法のエビデンスを確立するため、日本人の、日本人のための大規模臨床試験が実施された。
・日本で最も使用されているCa拮抗剤であるアムロジピン(ノルバスク、アムロジン)もしくはARB製剤であるカンデサルタン(ブロプレス)をベースに日本人高血圧患者をどのように改善するかを検討するため、4728例が登録され、2群に分けられ、観察期間は平均3.2年で、症例追跡率は97%を超えるなど、極めて質の高い試験となった。欧米のエビデンスに頼らざるを得なかった時代から脱却し、日本の臨床に即したエビデンスに基づく新たな高血圧治療のスタートを意味する。また、医師主導の臨床試験であり、企業の関与がないため、信頼性の高いものである。
・イベント(脳血管系、心、腎及び血管)の発生は、両群に差はなかった。むしろ、カンデサルタン群がアムロジピン群でよりも収縮期血圧が2mmHg高いままの(収縮期血圧が2mmHg高くなると、脳卒中の死亡率を6.4%増加させる)血圧差が続いていたことを考慮すると、現代の日本人の降圧療法にはRA系の抑制による臓器保護作用が必要であることが示唆された。
・カンデサルタンは、より長期に使うことでイベントの発現が減少していくこと、高齢者や腎機能障害例、そして肥満例でイベント発現リスクが低下することなどが明確になった。また、近年、著しい増加が懸念されている糖尿病の新規発症は、カンデサルタン群で発症リスクが36%低下した。
・経年的イベント発現率に変化をみると、カンデサルタン投与群では、経年的にイベント発現率が低下していくことを認めた。累積イベント発現率の曲線も、途中で交差(最初はアムロジピン投与群の方がイベント発生は低い)している。RA系抑制による臓器保護や臓器障害のリセットが発揮されたことを示唆するものと考える。
・世界的にメタボリックシンドロームの増加が問題になっている。日本のメタボリックシンドロームは、欧米に見られる肥満度の高い糖尿病型優位型と異なり、肥満度が軽い高血圧型優位型である。CASE-Jにより、この高血圧優位型メタボリックシンドロームの生命予後をカンデサルタンが改善し、それに加えて糖尿病の新規発症を抑制することが明らかになった。この新知見は日本や同等の肥満度を有するアジア諸国にとどまらず、欧米諸国の高血圧やメタボリックシンドローム治療ガイドラインに強いインパクトを与えることになる。
・高血圧の発症に関与する因子は、血管リモデリングの亢進や内皮機能障害、脳の交感神経系の過剰活性化、腎の組織障害、さらには、インスリン抵抗性の惹起等が考えられる。しかし、これらのほとんどはアンジオテンシンⅡの活性化が引き金となっている。
・カンデサルタン投与後速やかに約10mmHg低下した収縮期血圧は、カンデサルタンの投与中止により、上昇するが、プラセボと同レベルまで上昇することはなく、中止後2年を経過しても2mmHg低い状態であった。この結果は単に降圧していたから得られたのではなく、アンジオテンシンⅡをブロックした結果として得られたと考えられる。
・CASE-Jの結果より、従来の降圧療法はCa拮抗剤がベースであったが、今後はARBがベースになってくる。また、CASE-Jは2006年10月に福岡県で開催された国際高血圧学会で報告されており、高い評価を得ている。
★CASE-J(Candesartan Antihypertensive Survival Evaluation in Japan)に学ぶ
・日本人の平均寿命は伸びてきていたが、2005年は平均寿命が低下した。この原因は高齢者の肺炎と心血管イベントの増加である。
・CASE-Jは21世紀における降圧療法のエビデンスを確立するため、日本人の、日本人のための大規模臨床試験が実施された。
・日本で最も使用されているCa拮抗剤であるアムロジピン(ノルバスク、アムロジン)もしくはARB製剤であるカンデサルタン(ブロプレス)をベースに日本人高血圧患者をどのように改善するかを検討するため、4728例が登録され、2群に分けられ、観察期間は平均3.2年で、症例追跡率は97%を超えるなど、極めて質の高い試験となった。欧米のエビデンスに頼らざるを得なかった時代から脱却し、日本の臨床に即したエビデンスに基づく新たな高血圧治療のスタートを意味する。また、医師主導の臨床試験であり、企業の関与がないため、信頼性の高いものである。
・イベント(脳血管系、心、腎及び血管)の発生は、両群に差はなかった。むしろ、カンデサルタン群がアムロジピン群でよりも収縮期血圧が2mmHg高いままの(収縮期血圧が2mmHg高くなると、脳卒中の死亡率を6.4%増加させる)血圧差が続いていたことを考慮すると、現代の日本人の降圧療法にはRA系の抑制による臓器保護作用が必要であることが示唆された。
・カンデサルタンは、より長期に使うことでイベントの発現が減少していくこと、高齢者や腎機能障害例、そして肥満例でイベント発現リスクが低下することなどが明確になった。また、近年、著しい増加が懸念されている糖尿病の新規発症は、カンデサルタン群で発症リスクが36%低下した。
・経年的イベント発現率に変化をみると、カンデサルタン投与群では、経年的にイベント発現率が低下していくことを認めた。累積イベント発現率の曲線も、途中で交差(最初はアムロジピン投与群の方がイベント発生は低い)している。RA系抑制による臓器保護や臓器障害のリセットが発揮されたことを示唆するものと考える。
・世界的にメタボリックシンドロームの増加が問題になっている。日本のメタボリックシンドロームは、欧米に見られる肥満度の高い糖尿病型優位型と異なり、肥満度が軽い高血圧型優位型である。CASE-Jにより、この高血圧優位型メタボリックシンドロームの生命予後をカンデサルタンが改善し、それに加えて糖尿病の新規発症を抑制することが明らかになった。この新知見は日本や同等の肥満度を有するアジア諸国にとどまらず、欧米諸国の高血圧やメタボリックシンドローム治療ガイドラインに強いインパクトを与えることになる。
・高血圧の発症に関与する因子は、血管リモデリングの亢進や内皮機能障害、脳の交感神経系の過剰活性化、腎の組織障害、さらには、インスリン抵抗性の惹起等が考えられる。しかし、これらのほとんどはアンジオテンシンⅡの活性化が引き金となっている。
・カンデサルタン投与後速やかに約10mmHg低下した収縮期血圧は、カンデサルタンの投与中止により、上昇するが、プラセボと同レベルまで上昇することはなく、中止後2年を経過しても2mmHg低い状態であった。この結果は単に降圧していたから得られたのではなく、アンジオテンシンⅡをブロックした結果として得られたと考えられる。
・CASE-Jの結果より、従来の降圧療法はCa拮抗剤がベースであったが、今後はARBがベースになってくる。また、CASE-Jは2006年10月に福岡県で開催された国際高血圧学会で報告されており、高い評価を得ている。
薬剤師修行ファイルNo.061221:高血圧治療
2006年12月研修記録
★アンチエイジング実現のための高血圧治療の考え方
・アンチエイジング(抗加齢)医学会は2001年に研究会として発足し、2003年に学会として改組後、現在は約6000名の会員からなる団体である。この団体の目的は老化の原因を克服することにより、老化を治療することを目的とし、最終的には健康長寿を目指す医学である。
・アンチエイジングでは、患者ごとに筋年齢、血管年齢、神経年齢、ホルモン年齢、骨年齢のそれぞれの老化度を判定し、老化を進行させる危険因子(免疫機能、代謝機能、酸化ストレス、心身ストレス、生活習慣)を取り除く。
・「人は血管とともに老いる」といわれるように、加齢においては血管機能の障害や低下が大きなポイントである。血管機能障害は最終的には心筋梗塞などの臓器障害を引き起こすため、酸化ストレスを抑制することは、血管年齢を若く保つためにも極めて重要である。酸化ストレスはアンジオテンシンⅡが関与している。
・骨粗鬆症と高血圧は一見無関係にみえるが、実は共通点が多いことが判明している。両者は加齢とともに発症率が増加することに加え、収縮期血圧が高いほど大腿骨の骨量が低下していることや、高血圧を合併していると骨折の頻度が増加することが明らかにされている。メカニズムとして、尿中カルシウム排泄の増加が考えられている。また、アンジオテンシンⅡは骨破壊を促進することが判明している。
・ARB製剤は降圧作用だけでなく、新規糖尿病の発生抑制効果(膵臓の保護作用)、抗酸化作用、認知機能改善作用、心筋繊維化抑制作用などが確認されており、臓器保護作用から臓器改善作用があると考えられる。
・高血圧患者の治療において、ARB製剤は早い時期から使用し、長期間使用することが重要であり、Ca拮抗剤は降圧効果が不十分な時に追加で使用するのが望ましい。
・老化のメカニズムの1つである肥満の状態では、活性酸素が発生しやすいことが知られている。肥満体では運動量の低下に伴い、骨量や筋肉量が減少するため若々しい身体を維持できなくなる。メタボリックシンドロームの予防においてもアンチエイジングは重要になっている。
・宇宙飛行士は早く老化すると言われている。無重力で生活すると、筋肉量が低下するためである。
・今年神戸で開催された日本肥満学会において、愛33宣言(美空ひばりのヒット曲にある愛燦燦が由来と思われる)が行われた。体重を3Kg減量し、ウエスト周囲径を3cm少なくしようとのこと。
・長生きの秘訣は腹八分目と言われているが、高齢で現在も活躍されている聖路加病院の日野原先生は、若い頃からカロリー制限をされており、必要量の2/3程度の摂取にされており、腹6~7分目が理想とのこと。
★オルメテック錠の最新情報
オルメテックの特徴は構造式にあり、AT1受容体(血圧を上げる)への結合にはカルボキシル基(COOH基)及びヒドロキシル基(OH基)の2つの側鎖(ダブルチェーンドメイン)が重要な役割を果たしている。ダブルチェーンドメインのメリットは強力にAT1受容体に結合し、レニン・アンジオテンシン(RA)系を強く抑制し、優れた降圧効果、持続する降圧効果、臓器保護作用がある。なお、他のARB製剤はダブルチェーンドメインがない。
最近のニュース:第一三共 アムロジピンとオルメサルタンの合剤がFDA承認された。
★アンチエイジング実現のための高血圧治療の考え方
・アンチエイジング(抗加齢)医学会は2001年に研究会として発足し、2003年に学会として改組後、現在は約6000名の会員からなる団体である。この団体の目的は老化の原因を克服することにより、老化を治療することを目的とし、最終的には健康長寿を目指す医学である。
・アンチエイジングでは、患者ごとに筋年齢、血管年齢、神経年齢、ホルモン年齢、骨年齢のそれぞれの老化度を判定し、老化を進行させる危険因子(免疫機能、代謝機能、酸化ストレス、心身ストレス、生活習慣)を取り除く。
・「人は血管とともに老いる」といわれるように、加齢においては血管機能の障害や低下が大きなポイントである。血管機能障害は最終的には心筋梗塞などの臓器障害を引き起こすため、酸化ストレスを抑制することは、血管年齢を若く保つためにも極めて重要である。酸化ストレスはアンジオテンシンⅡが関与している。
・骨粗鬆症と高血圧は一見無関係にみえるが、実は共通点が多いことが判明している。両者は加齢とともに発症率が増加することに加え、収縮期血圧が高いほど大腿骨の骨量が低下していることや、高血圧を合併していると骨折の頻度が増加することが明らかにされている。メカニズムとして、尿中カルシウム排泄の増加が考えられている。また、アンジオテンシンⅡは骨破壊を促進することが判明している。
・ARB製剤は降圧作用だけでなく、新規糖尿病の発生抑制効果(膵臓の保護作用)、抗酸化作用、認知機能改善作用、心筋繊維化抑制作用などが確認されており、臓器保護作用から臓器改善作用があると考えられる。
・高血圧患者の治療において、ARB製剤は早い時期から使用し、長期間使用することが重要であり、Ca拮抗剤は降圧効果が不十分な時に追加で使用するのが望ましい。
・老化のメカニズムの1つである肥満の状態では、活性酸素が発生しやすいことが知られている。肥満体では運動量の低下に伴い、骨量や筋肉量が減少するため若々しい身体を維持できなくなる。メタボリックシンドロームの予防においてもアンチエイジングは重要になっている。
・宇宙飛行士は早く老化すると言われている。無重力で生活すると、筋肉量が低下するためである。
・今年神戸で開催された日本肥満学会において、愛33宣言(美空ひばりのヒット曲にある愛燦燦が由来と思われる)が行われた。体重を3Kg減量し、ウエスト周囲径を3cm少なくしようとのこと。
・長生きの秘訣は腹八分目と言われているが、高齢で現在も活躍されている聖路加病院の日野原先生は、若い頃からカロリー制限をされており、必要量の2/3程度の摂取にされており、腹6~7分目が理想とのこと。
★オルメテック錠の最新情報
オルメテックの特徴は構造式にあり、AT1受容体(血圧を上げる)への結合にはカルボキシル基(COOH基)及びヒドロキシル基(OH基)の2つの側鎖(ダブルチェーンドメイン)が重要な役割を果たしている。ダブルチェーンドメインのメリットは強力にAT1受容体に結合し、レニン・アンジオテンシン(RA)系を強く抑制し、優れた降圧効果、持続する降圧効果、臓器保護作用がある。なお、他のARB製剤はダブルチェーンドメインがない。
最近のニュース:第一三共 アムロジピンとオルメサルタンの合剤がFDA承認された。
薬剤師研修ファイルNo.070210:高血圧治療
2007年2月研修記録
★プレミネント錠について【万有製薬㈱学術部より】
・プレミネント錠は2006月12月に販売を開始した日本初の持続性ARB/利尿薬の合剤である。高血圧治療ガイドライン2004年において、少量の利尿剤は他の降圧薬の効果を高めるため、組成はニューロタン50mgとダイクロトライド(25mg)の半量の12.5mgとした。
・臨床試験(海外データ)において、収縮期血圧の血圧降下度(8~12週間投与)は、ニューロタン50mgで10.4mmHg、ブロプレス8mgで11.8mmHg、ディオバン80mgで10.9mmHgであったが、プレミネントで16.5mmHgであり、優れた降圧効果を示した。この理由はアンジオテンシンⅡによる血管収縮をブロックする作用とNa排泄促進作用である。
・プレミネントの相乗的薬理作用として、ニューロタンのカリウム上昇の副作用をダイクロトライドでカリウムを低下させるため、相殺される。また、ダイクロライトで尿酸を上昇させるが、ニューロタンで尿酸を下げる作用があるため相殺される。血圧は相乗効果があり、理想的な組み合わせである。
・プレミネントは過度な血圧低下のおそれ等があり、第一選択薬ではないが、次回の高血圧治療ガイドラインでは第一選択薬になる可能性がある。
★降圧薬治療は単剤か併用か
・2000例以上の高血圧患者を見ているが、使用する降圧薬は単剤34%、2剤40%、3剤17%であり、残りは4剤以上であり、降圧目標達成率は50%未満になっているのが現状である。また、単剤での達成率が低く、併用することにより達成率が高くなっている。
・臨床経験において、拡張期血圧100mmHg以上の患者には単剤では血圧がコントロールするのは困難であり、併用する必要がある。
・白衣高血圧は収縮期血圧が高くなるが、拡張期血圧に変化はない。家庭血圧を測定させてから降圧薬の使用を考えている。白衣高血圧の現象は、患者と医師の慣れで解消できる場合もあるが、1ヶ月以内に解消できなければ、解消は困難である。
・大規模臨床試験において、ARB使用で血圧が目標値に達しない場合、ARBの増量で血圧を下げるには限界があり、Ca拮抗剤の併用で血圧を下げる方が良い。
・季節により、降圧薬の調整をしているが、少量の利尿剤の出し入れ(冬に利尿剤を追加)をするのが理想である。
★厳格な降圧と臓器保護ARBと利尿剤合剤からのアプローチ
・高血圧治療ガイドライン2004年において、厳格な降圧目標を示しており、目標達成率が低く、達成に向けて努力する必要がある。
・70歳以上の高血圧患者において、拡張期血圧は目標達成率が高いが、収縮期血圧は目標達成率が極めて低いのが現状である。なお、高齢者は収縮期血圧が高くなるが、拡張期血圧は高くならない傾向がある。この理由は心臓の働きから説明可能である。
・日本において、降圧薬に利尿剤があまり使用されていなかった理由として、日本のサイアザイド系利尿は用量が多いため、副作用が出やすく、プレミネントは適正量である。また、厚生労働省にも利尿剤の減量を働きかけているが、反応が鈍いのも現状である。
・利尿剤は人種差があり、ラシックスはヘキスト(ドイツの製薬会社)で開発されたため、ドイツ人には向いているが、日本人には向いているかは疑問である。日本人に向いている利尿剤の開発も必要であると考えている。
【ニュース情報】プレミネント錠:2008年1月より「投薬期限解除」のお知らせ
★プレミネント錠について【万有製薬㈱学術部より】
・プレミネント錠は2006月12月に販売を開始した日本初の持続性ARB/利尿薬の合剤である。高血圧治療ガイドライン2004年において、少量の利尿剤は他の降圧薬の効果を高めるため、組成はニューロタン50mgとダイクロトライド(25mg)の半量の12.5mgとした。
・臨床試験(海外データ)において、収縮期血圧の血圧降下度(8~12週間投与)は、ニューロタン50mgで10.4mmHg、ブロプレス8mgで11.8mmHg、ディオバン80mgで10.9mmHgであったが、プレミネントで16.5mmHgであり、優れた降圧効果を示した。この理由はアンジオテンシンⅡによる血管収縮をブロックする作用とNa排泄促進作用である。
・プレミネントの相乗的薬理作用として、ニューロタンのカリウム上昇の副作用をダイクロトライドでカリウムを低下させるため、相殺される。また、ダイクロライトで尿酸を上昇させるが、ニューロタンで尿酸を下げる作用があるため相殺される。血圧は相乗効果があり、理想的な組み合わせである。
・プレミネントは過度な血圧低下のおそれ等があり、第一選択薬ではないが、次回の高血圧治療ガイドラインでは第一選択薬になる可能性がある。
★降圧薬治療は単剤か併用か
・2000例以上の高血圧患者を見ているが、使用する降圧薬は単剤34%、2剤40%、3剤17%であり、残りは4剤以上であり、降圧目標達成率は50%未満になっているのが現状である。また、単剤での達成率が低く、併用することにより達成率が高くなっている。
・臨床経験において、拡張期血圧100mmHg以上の患者には単剤では血圧がコントロールするのは困難であり、併用する必要がある。
・白衣高血圧は収縮期血圧が高くなるが、拡張期血圧に変化はない。家庭血圧を測定させてから降圧薬の使用を考えている。白衣高血圧の現象は、患者と医師の慣れで解消できる場合もあるが、1ヶ月以内に解消できなければ、解消は困難である。
・大規模臨床試験において、ARB使用で血圧が目標値に達しない場合、ARBの増量で血圧を下げるには限界があり、Ca拮抗剤の併用で血圧を下げる方が良い。
・季節により、降圧薬の調整をしているが、少量の利尿剤の出し入れ(冬に利尿剤を追加)をするのが理想である。
★厳格な降圧と臓器保護ARBと利尿剤合剤からのアプローチ
・高血圧治療ガイドライン2004年において、厳格な降圧目標を示しており、目標達成率が低く、達成に向けて努力する必要がある。
・70歳以上の高血圧患者において、拡張期血圧は目標達成率が高いが、収縮期血圧は目標達成率が極めて低いのが現状である。なお、高齢者は収縮期血圧が高くなるが、拡張期血圧は高くならない傾向がある。この理由は心臓の働きから説明可能である。
・日本において、降圧薬に利尿剤があまり使用されていなかった理由として、日本のサイアザイド系利尿は用量が多いため、副作用が出やすく、プレミネントは適正量である。また、厚生労働省にも利尿剤の減量を働きかけているが、反応が鈍いのも現状である。
・利尿剤は人種差があり、ラシックスはヘキスト(ドイツの製薬会社)で開発されたため、ドイツ人には向いているが、日本人には向いているかは疑問である。日本人に向いている利尿剤の開発も必要であると考えている。
【ニュース情報】プレミネント錠:2008年1月より「投薬期限解除」のお知らせ
薬剤師研修ファイルNo.071214:ABR剤(選択的AT1受容体ブロッカー)
2007年12月研修記録
★ ディオバン錠について【ノバルティス ファーマ株式会社より】
・高血圧は、頭痛、めまい、肩こり、動悸、むくみなどの症状を伴うことがある。
・血圧が高いと血管や心臓にダメージを与える。
・生活習慣や体質により血圧が高くなる。
・脳卒中、心筋梗塞、心不全、腎不全、糖尿病、ストレス、肥満、喫煙、運動不足、過労などが血圧を上げる因子となる。
・高齢者は、140/90mmHg以下(収縮期血圧/拡張期血圧)、若・中年層は、130/85以下、糖尿病・腎不全の患者は、120/80以下が管理目標値である。
・降圧剤のシェア(金額ベース)は、ARB剤が55%、Ca拮抗剤16%である。ただし、処方数では、Ca拮抗剤がARB剤を上回っている。
・ACE阻害剤は、アンジオテンシンⅠ → アンジオテンシンⅡ(昇圧物質)を変換する酵素を阻害することにより降圧効果をもたらす。一方で、ブラジキニンの分解を阻害するためブラジキニンが蓄積して副作用である空咳が生じる。
・ABR剤は、アンジオテンシンⅡが結合するAT1受容体(血圧上昇、心血管障害を起こす受容体)をブロックすることにより降圧効果を示す。
・ディオバン錠は、AT1受容体を選択的にブロックする一方で、AT2受容体(AT1受容体と拮抗して働き血圧効果、心血管保護をもたらす。)はブロックしないため、AT1受容体に結合できないアンジオテンシンⅡがAT2受容体を刺激することによる降圧作用も有する。
・ディオバンは、AT1受容体選択性がAT2受容体の30,000倍であり、他のABR剤と比べて最も選択性か高い。(ニューロタンは1,000倍、ミカルディスは3,000倍、ブロプレスは10,000倍、オルメテックは12,500倍)
・日本のABR剤シェアは、ディオバンはブロプレスについで2番目である。ニューロタンは、プレミネント(利尿剤との合剤)にシフトしている。
・JIKEI HEART STUDY は、日本人の高血圧患者を対象として従来の降圧薬治療(Ca拮抗薬など)にディオバンを上乗せ投与した群と従来の降圧薬治療を増強した群(ABR剤以外で強化)とで比較検討を行った大規模臨床試験である。降圧効果は、ディオバン上乗せ群で平均8.2/4.7(収縮期血圧/拡張期血圧)の降圧が認められた。(131/77mmHg) 従来降圧治療強化群では、平均7.2/3.7の降圧が認められた。(132/78mmHg)
ディオバンを48ヶ月(4年間)上乗せ投与した結果、従来降圧治療強化群より脳卒中の発生率は40%、心不全発生率は47%、狭心症発生率は65%のリスクを低減できた。ただし、リスク低減の有意差が生じてくるのは、18ヶ月以降であった。
・費用効果:ディオバン錠80mgは、151.1円/錠(1錠90日分13,599円)、ニューロタン錠50mgは、186.8円/錠(16,812円、差額3,213円)、ミカルディス錠40mgは171.5円/錠(15,435円、差額1,836円)、ブロプレス錠8mgは180.3円/錠(16,227円、差額2,628円)、オルメテック錠20mgは172.4円/錠(15,516円、差額1,917円)である。
★ ディオバン錠について【ノバルティス ファーマ株式会社より】
・高血圧は、頭痛、めまい、肩こり、動悸、むくみなどの症状を伴うことがある。
・血圧が高いと血管や心臓にダメージを与える。
・生活習慣や体質により血圧が高くなる。
・脳卒中、心筋梗塞、心不全、腎不全、糖尿病、ストレス、肥満、喫煙、運動不足、過労などが血圧を上げる因子となる。
・高齢者は、140/90mmHg以下(収縮期血圧/拡張期血圧)、若・中年層は、130/85以下、糖尿病・腎不全の患者は、120/80以下が管理目標値である。
・降圧剤のシェア(金額ベース)は、ARB剤が55%、Ca拮抗剤16%である。ただし、処方数では、Ca拮抗剤がARB剤を上回っている。
・ACE阻害剤は、アンジオテンシンⅠ → アンジオテンシンⅡ(昇圧物質)を変換する酵素を阻害することにより降圧効果をもたらす。一方で、ブラジキニンの分解を阻害するためブラジキニンが蓄積して副作用である空咳が生じる。
・ABR剤は、アンジオテンシンⅡが結合するAT1受容体(血圧上昇、心血管障害を起こす受容体)をブロックすることにより降圧効果を示す。
・ディオバン錠は、AT1受容体を選択的にブロックする一方で、AT2受容体(AT1受容体と拮抗して働き血圧効果、心血管保護をもたらす。)はブロックしないため、AT1受容体に結合できないアンジオテンシンⅡがAT2受容体を刺激することによる降圧作用も有する。
・ディオバンは、AT1受容体選択性がAT2受容体の30,000倍であり、他のABR剤と比べて最も選択性か高い。(ニューロタンは1,000倍、ミカルディスは3,000倍、ブロプレスは10,000倍、オルメテックは12,500倍)
・日本のABR剤シェアは、ディオバンはブロプレスについで2番目である。ニューロタンは、プレミネント(利尿剤との合剤)にシフトしている。
・JIKEI HEART STUDY は、日本人の高血圧患者を対象として従来の降圧薬治療(Ca拮抗薬など)にディオバンを上乗せ投与した群と従来の降圧薬治療を増強した群(ABR剤以外で強化)とで比較検討を行った大規模臨床試験である。降圧効果は、ディオバン上乗せ群で平均8.2/4.7(収縮期血圧/拡張期血圧)の降圧が認められた。(131/77mmHg) 従来降圧治療強化群では、平均7.2/3.7の降圧が認められた。(132/78mmHg)
ディオバンを48ヶ月(4年間)上乗せ投与した結果、従来降圧治療強化群より脳卒中の発生率は40%、心不全発生率は47%、狭心症発生率は65%のリスクを低減できた。ただし、リスク低減の有意差が生じてくるのは、18ヶ月以降であった。
・費用効果:ディオバン錠80mgは、151.1円/錠(1錠90日分13,599円)、ニューロタン錠50mgは、186.8円/錠(16,812円、差額3,213円)、ミカルディス錠40mgは171.5円/錠(15,435円、差額1,836円)、ブロプレス錠8mgは180.3円/錠(16,227円、差額2,628円)、オルメテック錠20mgは172.4円/錠(15,516円、差額1,917円)である。
薬剤師修行ファイルNo.071019:選択的アルドステロンブロッカー
2007年11月修行記録
★製品情報提供エプレレノン(商品名:セララ)【ファイザー㈱より】
・セララ錠は、11月13日(火)から発売、世界初の選択的アルドステロンブロッカーであり、新しい作用機序の高血圧治療剤である。セララの商品名の由来は(SELective Aldosteron Receptor Antagonist)の大文字を取ってセララと命名した。
・アルドステロンはレニン・アンジオテンシン系の最下流(アンジオテンシンノーゲン→アンジオテンシンⅠ→アンジオテンシンⅡ→アルドステロン)に存在し、血圧上昇(水・Na再吸収、中枢神経、血管)及び臓器障害(心臓、腎臓、脳、血管)に関係するホルモンである。そのため、高血圧や臓器障害の抑制において、アルドステロンを直接ブロックすることが重要である。
・セララは、海外では心不全治療剤で上市されているが、国内では高血圧治療剤で販売し、臓器保護作用で特に心臓の保護作用がある。セララは、アルダクトンAと異なり、選択的にミネラロコルチコイドに結合し、アルドステロンの作用を直接ブロックするため、アルダクトンの副作用である女性化乳房や月経関連障害などの性ホルモン受容体には作用しない。・ セララの用法・用量は1日1回50mg投与であるが、効果不十分の場合は100mgまで増量できる。ただし、重大な副作用として、高カリウム血症が認められるため、注意する必要がある。また、薬価はニューロタンの薬価が参照され、ニューロタン錠25mg(97.9円)、ニューロタン錠50mg(186.8円)であり、セララ錠50mg(93.4円)、セララ錠100mg(178.2円)である。
★アルドステロンの臓器保護障害作用と新規アルドステロン拮抗薬の臨床・人類(哺乳類)は古代には海に生息していたが、その後、陸で生活するようになり、海水だとNaが豊富であるが、陸で生活するにはNaを吸収する機構が必要である。アルドステロン(ホルモン)は必要なホルモンであるが、最近は負の遺産になっている。
・レニン・アンジオテンシン系のアンジオテンシンノーゲン→アンジオテンシンⅠの過程でレニンが関与する。セララは最下流に存在するが、現在最上流であるレニン阻害剤の降圧剤が開発されており、3年後には上市される予定である。
・ARBは、優れた薬剤であるが、最近、アルドステロンブレイクスルー現象(長期間服用すると、効果が弱くなる)があるため、セララとの併用も必要となる。
・高血圧治療剤は、ABCDαと覚える。「A」はACE阻害剤及びARBであり、「B」はβ遮断剤、「C」はCa拮抗剤、「D」は(Diuretic:利尿剤)、「α」はα遮断薬である。
・セララの使用方法は、専門家の医師でも意見が分かれており、①単独使用、②他の降圧剤との併用使用、③糖尿病合併症の高血圧患者への使用、④心疾患を伴う高血圧患者への使用、⑤低レニン性高血圧患者への使用などが考えらる。しかし、現時点において、データは十分でないため、今後のエビデンスが必要である。
・エプレレノンの開発は流転の運命があり、当初、チバガイギー(レニン・アンジオテンシン系薬剤の開発に力を入れていた製薬会社)が新化合物として、発見された。その後、日本モンサント→ファルマシア→ファイザーと開発が引き継がれた経緯がある。
★製品情報提供エプレレノン(商品名:セララ)【ファイザー㈱より】
・セララ錠は、11月13日(火)から発売、世界初の選択的アルドステロンブロッカーであり、新しい作用機序の高血圧治療剤である。セララの商品名の由来は(SELective Aldosteron Receptor Antagonist)の大文字を取ってセララと命名した。
・アルドステロンはレニン・アンジオテンシン系の最下流(アンジオテンシンノーゲン→アンジオテンシンⅠ→アンジオテンシンⅡ→アルドステロン)に存在し、血圧上昇(水・Na再吸収、中枢神経、血管)及び臓器障害(心臓、腎臓、脳、血管)に関係するホルモンである。そのため、高血圧や臓器障害の抑制において、アルドステロンを直接ブロックすることが重要である。
・セララは、海外では心不全治療剤で上市されているが、国内では高血圧治療剤で販売し、臓器保護作用で特に心臓の保護作用がある。セララは、アルダクトンAと異なり、選択的にミネラロコルチコイドに結合し、アルドステロンの作用を直接ブロックするため、アルダクトンの副作用である女性化乳房や月経関連障害などの性ホルモン受容体には作用しない。・ セララの用法・用量は1日1回50mg投与であるが、効果不十分の場合は100mgまで増量できる。ただし、重大な副作用として、高カリウム血症が認められるため、注意する必要がある。また、薬価はニューロタンの薬価が参照され、ニューロタン錠25mg(97.9円)、ニューロタン錠50mg(186.8円)であり、セララ錠50mg(93.4円)、セララ錠100mg(178.2円)である。
★アルドステロンの臓器保護障害作用と新規アルドステロン拮抗薬の臨床・人類(哺乳類)は古代には海に生息していたが、その後、陸で生活するようになり、海水だとNaが豊富であるが、陸で生活するにはNaを吸収する機構が必要である。アルドステロン(ホルモン)は必要なホルモンであるが、最近は負の遺産になっている。
・レニン・アンジオテンシン系のアンジオテンシンノーゲン→アンジオテンシンⅠの過程でレニンが関与する。セララは最下流に存在するが、現在最上流であるレニン阻害剤の降圧剤が開発されており、3年後には上市される予定である。
・ARBは、優れた薬剤であるが、最近、アルドステロンブレイクスルー現象(長期間服用すると、効果が弱くなる)があるため、セララとの併用も必要となる。
・高血圧治療剤は、ABCDαと覚える。「A」はACE阻害剤及びARBであり、「B」はβ遮断剤、「C」はCa拮抗剤、「D」は(Diuretic:利尿剤)、「α」はα遮断薬である。
・セララの使用方法は、専門家の医師でも意見が分かれており、①単独使用、②他の降圧剤との併用使用、③糖尿病合併症の高血圧患者への使用、④心疾患を伴う高血圧患者への使用、⑤低レニン性高血圧患者への使用などが考えらる。しかし、現時点において、データは十分でないため、今後のエビデンスが必要である。
・エプレレノンの開発は流転の運命があり、当初、チバガイギー(レニン・アンジオテンシン系薬剤の開発に力を入れていた製薬会社)が新化合物として、発見された。その後、日本モンサント→ファルマシア→ファイザーと開発が引き継がれた経緯がある。
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