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薬剤師修行ファイルNo.080120:統合失調症の薬物治療について

2008年1月研修記録
★新規抗精神病薬エビリファイの薬理作用について【大塚製薬㈱学術部より】
エビリファイは大塚製薬が開発し、最初にアメリカで承認され販売を開始し、日本では2006年6月から販売を開始している統合失調症治療剤である。
・統合失調症はドパミン神経の異常が原因とされている。エビリファイはドパミンD2受容体パーシャルアゴニスト(部分アゴニスト)として作用することにより、ドパミン作動性神経伝達が過剰活動状態の場合にはアンタゴニストとして作用し、神経伝達を抑制する。また、ドパミン作動性神経伝達が低下している場合にはアゴニストとして作用し、神経伝達を活性化する。このような作用により、陽性・陰性症状に効果がある。
・エビリファイの副作用には「不眠」がある。しかし、服用方法を工夫(半減期が約16時間と長いため、1日1回朝食後に服用する)することで不眠の副作用は回避できる。
・大塚製薬㈱ではプレタール、ムコスタ、メプチン及びエビリファイを開発し、販売している。疾患では
関連性がないと思われるが、構造式に共通点があり、すべて同じキノリノン骨格を有している。

★統合失調症の薬物治療について
・統合失調症の病因として、明らかな成因は不明であるが、疾患の経過から想定されたストレス-脆弱性仮説と、神経伝達物質の変化から導き出したドパミン仮説が広く支持されている。
・統合失調症が発症する前ぶれとして、少しずつ変化が起こっており、神経衰弱状態、抑うつ症状、脅迫などの神経症症状がみられる。また、引きこもり、不登校や欠勤などの行動面の変化がある。IQ(知能指数)は70以下で知的障害があるが、70~80で統合失調症と言われている。
・1952年クロルプロマジン(ウインタミン、コントミン等)の統合失調症に対する効果が認められて以来、定型抗精神病が長い間治療の中心であった。なお、クロルプロマジンは麻酔薬として開発された経緯があるが、鎮静作用が認められたため、抗精神病薬となった。
・定型抗精神病薬は医師が最も懸念している錐体外路性の副作用(EPS)が多く認められており、錐体外路性の副作用が少なく、陰性症状にも効果がある非定型抗精神病薬が1996年から使用されるようになった。
・非定型抗精神病薬にも投与量が多くなれば、EPSが多いこと、また、陰性症状が改善しない場合がある。エビリファイはEPSが用量依存的に出現せず、不安や抑うつに対する効果もあり、陰性症状も改善する。
・エビリファイはドパミンパーシャルアゴニストであり今までの非定型抗精神病とは作用機序が異なり、ドパミン受容体への親和性は非常に強い薬剤である。例えば、リスペリドンにエビリファイを上乗すると、脳内のドパミン受容体はリスペリドンからエビリファイに置き換わるもとの想定できる。高用量のエビリファイを一挙に上乗せしてしまうと、前薬がドパミン受容体から急速に離脱してしまい、その離脱による副作用が出現することになる。
・エビリファイへのスイッチングのキーポイントは、①基本的には、上乗せ漸増漸減法。原則として6mg/日を前薬に上乗せする、②18mgまでまず増量し、しばらく観察する、③前薬の漸減は時間をかけて慎重にする、④エビリファイの至適用量も注意深く検討する、⑤抗パーキンソン剤の漸減は最後にする、⑥患者・家族と治療目的を共有する。エビリファイの治療により得られるメリットやスイッチング方法を患者・家族に説明する。
・エビリファイの警告として、糖尿病患者には慎重投与になっているが、海外でのエビデンスとして、糖尿病患者の危険性はなく、慎重投与しなくても良い。
・統合失調症の薬物治療は多剤併用が多いが、可能なかぎり単剤で治療すべきである。再発の原因は薬が多いため、薬を服用しなくなるためである。
フマル酸クエチアピンには25mg錠と100mg錠の2種類の錠剤しかないが、50mg錠が存在しても良いように思われるが、急激に増量しても副作用が発現しないため、50mg錠が存在していない。
<Q1>統合失調症治療剤で適用外使用がありますか?
<A1>不安や抑うつ症状に使用する場合がある。
<Q2>統合失調症の処方せんで用量が逸脱している場合(高用量)、疑義照会をしても処方せん通り調剤して下さいと処方医師に言われて調剤しているが、どういう意図がありますか?
<A2>個々により状況が異なるが、高用量による副作用を利用している場合がある。ドパミン以外の受容体(セロトニン)を占有する必要があるためである。
<Q3>リストカット(自殺志願者)の患者にはどのような薬剤が処方され、また、薬局ではどのような対応をする必要がありますか?
<A3>リストカットの患者には、抗不安薬や気分安定剤であるリーマスなどを処方している。また、患者への対応は薬局の守備範囲を超えているが、気分を和らげる言葉が望ましいが、深入りしない方が良い。深入りすると、主治医と意見が異なり、面倒なことになる。

【最近のニュース】統合失調症治療剤の新薬「ロナセン錠」2008年1月25日

薬剤師修行ファイルNo.070614:エビリファイ

2007年6月研修記録
★エビリファイの製品情報【大塚製薬㈱担当者より】
統合失調症の治療薬には、抗精神病薬が使用されている。抗精神病薬は第一世代の定型抗精神病薬(コントミンセレネース等)は、陽性症状には効果があるが、陰性症状には効果がなかった。第二世代の非定型抗精神病薬(リスパダールセロクエルルーラン)は、陽性症状及び陰性症状に効果があり、錐体外路症状の副作用も少なくなっているが、脂質代謝異常や体重増加の副作用がある。第三世代のエビリファイは、第二世代の抗精神病薬と同程度の効果があり、脂質代謝異常や体重増加の副作用がないのが特徴である。
・統合失調症はドパミン神経の異常が原因とされている。エビリファイはドパミンD2受容体パーシャルアゴニスト(部分アゴニスト)として作用することにより、ドパミン作動性神経伝達が過剰活動状態の場合にはアンタゴニストとして作用し、神経伝達を抑制する。また、ドパミン作動性神経伝達が低下している場合にはアゴニストとして作用し、神経伝達を活性化する。このような作用により、陽性・陰性症状に効果がある。
・エビリファイの使用方法は、単剤から単剤の切り替えが基本である。基本的には、前治療薬にエビリファイ6mg/日を加え、2週間程度症状を確認し、その後12mg/日に増量すると同時に前治療薬を漸減し、症状に応じて6~24mg/日(最大30mg/日)までの範囲で適宜増減する。前薬の中止には少なくとも4週間以上、症状によっては3ケ月程度の期間をかけて行うことが望ましい。なお、エビリファイは切り替え時に、不眠、不安や焦燥感、落ち着きのなさなどがあるが、これはエビリファイが過剰な鎮静作用及び抗コリン作用を持たないことなどが一因と考えられる。<Q1>非定型向精神の副作用として、体重増加がありますが、エビリファイは体重増加がない理由は?
<A1>体重増加の要因は、ヒスタミンH1受容体遮断やセロトニン5HT2c受容体遮断作用が関係すると考えられており、エビリファイはその遮断作用が弱いため、体重増加はない。
<Q2>エビリファイの効果は、遅いと言われているが実際はどうですか?
<A2>効果が遅いと医師から指摘がある。過剰な鎮静作用や抗コリン作用を持たないためである。最初の2週間程度は、ベンゾジアゼピン系薬剤の併用も必要になる場合がある。
<Q3>統合失調症は、ドパミン仮説で説明がなされているが、ドパミン仮説を超える考えはありますか?
<A3>ドパミン仮説では、十分ではない。ドパミン以外の神経伝達物質系の異常(特に、グルタミン酸系)を想定した仮説や、統合失調症を神経回路網の異常としてシステム的に考えようとする試みも提唱されている。
<Q4>統合失調症の薬剤において、用法・用量に関して新しい考え方はありますか?
<A4>PETを用いた脳内ドパミンD2受容体の占拠率と臨床効果の関係の研究によると、ドパミンD2受容体の占拠率と臨床効果の関係によると、ドパミンD2受容体の占拠率65%以上で抗精神病効果が現れ、80%以上になると錐体外路症状が出現しやすいことが明らかになっている。非定型抗精神病薬は定型抗精神病薬に比べ用量の範囲(ドパミンD2受容体の占拠率65%~80%)が広いため、錐体外路症状が現れにくく、用量設定がしやすい。エビリファイは、非定型抗精神病薬に分類されており、用量の幅が広く設定できる。
<Q5>統合失調症の告知の割合は?
<A5>告知の割合は不明であるが、最近は告知の割合が多くなっており、告知した方が治療成績が良い。
<Q6>リスパダールは液剤を販売しているが、エビリファイの液剤の販売予定は?
<A6>2008年に販売する予定です。