薬剤師修行ファイルNo.070614:エビリファイ

2007年6月研修記録
★エビリファイの製品情報【大塚製薬㈱担当者より】
統合失調症の治療薬には、抗精神病薬が使用されている。抗精神病薬は第一世代の定型抗精神病薬(コントミンセレネース等)は、陽性症状には効果があるが、陰性症状には効果がなかった。第二世代の非定型抗精神病薬(リスパダールセロクエルルーラン)は、陽性症状及び陰性症状に効果があり、錐体外路症状の副作用も少なくなっているが、脂質代謝異常や体重増加の副作用がある。第三世代のエビリファイは、第二世代の抗精神病薬と同程度の効果があり、脂質代謝異常や体重増加の副作用がないのが特徴である。
・統合失調症はドパミン神経の異常が原因とされている。エビリファイはドパミンD2受容体パーシャルアゴニスト(部分アゴニスト)として作用することにより、ドパミン作動性神経伝達が過剰活動状態の場合にはアンタゴニストとして作用し、神経伝達を抑制する。また、ドパミン作動性神経伝達が低下している場合にはアゴニストとして作用し、神経伝達を活性化する。このような作用により、陽性・陰性症状に効果がある。
・エビリファイの使用方法は、単剤から単剤の切り替えが基本である。基本的には、前治療薬にエビリファイ6mg/日を加え、2週間程度症状を確認し、その後12mg/日に増量すると同時に前治療薬を漸減し、症状に応じて6~24mg/日(最大30mg/日)までの範囲で適宜増減する。前薬の中止には少なくとも4週間以上、症状によっては3ケ月程度の期間をかけて行うことが望ましい。なお、エビリファイは切り替え時に、不眠、不安や焦燥感、落ち着きのなさなどがあるが、これはエビリファイが過剰な鎮静作用及び抗コリン作用を持たないことなどが一因と考えられる。<Q1>非定型向精神の副作用として、体重増加がありますが、エビリファイは体重増加がない理由は?
<A1>体重増加の要因は、ヒスタミンH1受容体遮断やセロトニン5HT2c受容体遮断作用が関係すると考えられており、エビリファイはその遮断作用が弱いため、体重増加はない。
<Q2>エビリファイの効果は、遅いと言われているが実際はどうですか?
<A2>効果が遅いと医師から指摘がある。過剰な鎮静作用や抗コリン作用を持たないためである。最初の2週間程度は、ベンゾジアゼピン系薬剤の併用も必要になる場合がある。
<Q3>統合失調症は、ドパミン仮説で説明がなされているが、ドパミン仮説を超える考えはありますか?
<A3>ドパミン仮説では、十分ではない。ドパミン以外の神経伝達物質系の異常(特に、グルタミン酸系)を想定した仮説や、統合失調症を神経回路網の異常としてシステム的に考えようとする試みも提唱されている。
<Q4>統合失調症の薬剤において、用法・用量に関して新しい考え方はありますか?
<A4>PETを用いた脳内ドパミンD2受容体の占拠率と臨床効果の関係の研究によると、ドパミンD2受容体の占拠率と臨床効果の関係によると、ドパミンD2受容体の占拠率65%以上で抗精神病効果が現れ、80%以上になると錐体外路症状が出現しやすいことが明らかになっている。非定型抗精神病薬は定型抗精神病薬に比べ用量の範囲(ドパミンD2受容体の占拠率65%~80%)が広いため、錐体外路症状が現れにくく、用量設定がしやすい。エビリファイは、非定型抗精神病薬に分類されており、用量の幅が広く設定できる。
<Q5>統合失調症の告知の割合は?
<A5>告知の割合は不明であるが、最近は告知の割合が多くなっており、告知した方が治療成績が良い。
<Q6>リスパダールは液剤を販売しているが、エビリファイの液剤の販売予定は?
<A6>2008年に販売する予定です。