薬剤師修行ファイルNo.070630:気管支喘息

2007年6月研修記録
★「吸入ステロイド喘息治療剤キュバール」【大日本住友製薬㈱学術部より】
キュバールは2002年8月から販売を開始し、プロピオン酸ベクロメタゾンを有効成分として、代替フロンを使用したスプレー型のステロイド吸入剤である。2005年1月には小児に対する用法・用量の追加承認を取得している。1瓶の噴霧回数は100回である。
・キュバールの特徴は、超微粒子(平均粒子径1.1μm)の薬剤(従来品は平均粒子径3.5μm)であるため、1回吸入すると約55%(従来品は約4%)が肺内に沈着可能である。また、マイルドな噴霧を可能にしているため、吸入のタイミングが少しずれても肺内沈着に大きな影響を与えない。
・他の吸入ステロイド薬からキュバールへの切り替えにより、夜間の咳、睡眠障害及び生活の程度が改善される。
・キュバールはスペーサーを使用しなくとも吸入タイミングが合わせやすい薬剤であるが、スペーサーが必要な患者には無償提供できるスペーサーを用意している。また、スプレー型吸入剤の欠点である残量がよくわからないとの指摘があるため、残量がある程度(約1/2、約1/3)わかる装置を無償提供している。

★国際的ガイドラインとエビデンスに基づいた気管支喘息の診断と治療
・喘息治療は1990年代から医療革命が起こり、狭くなっている気管支を広げるため、気管支拡張剤を使用していたが、その後、気道粘膜の炎症であることが判明し、吸入ステロイドが使用されている。
・日本における喘息死は、年々減少しているが、2006年度で約2700人になっている。しかし、欧米と比較すると、喘息死の比率は高いのが現状であり、日本では吸入ステロイドの使用頻度が低いのが原因である。喘息死の原因は、β刺激薬の過度の使用(歌手のテレサテンの死亡原因とされている)である。
・吸入ステロイドには加圧ガスによるエアゾール(スプレー型)と自己の吸気によるドライパウダー吸入器がある。エアゾールは従来使用されていたフロンガスを基剤としたものから代替フロンを使用したものへ変換されている。これは環境問題だけでなく、無水アルコールを加えることによって懸濁液から溶液になり超微粒子エアロゾルを発生させることが可能となり、肺内沈着率を上げる効果がある。
また、小児、高齢者には自己吸気が衰えている場合があり、スプレー型の方が適している。
・ステロイドの吸入は、すべて食前使用を推奨している。吸入後によくウガイをして、ウガイしても口の中に残っていた薬剤が食べ物や唾液と一緒に胃の中へ流れるため、ガンジダ予防になる。
・最近、販売されたアドエア(吸入ステロイド薬と長時間作用型吸入β2刺激薬の合剤)は推奨できる薬剤であるが、ドライパウダー型になっており、スプレー型の開発が望まれる。