2007年7月研修記録
★クレストール錠の紹介【塩野義製薬㈱より】
・クレストールは日本で6番目に市販されたスタチンであるが、2007年3月時点でスタチン市場において、第2位に躍進している。(第1位はリピトール、第3位はメバロチン)
・クレストールの特徴は2.5~20mg投与時、LDLコレステロール(以下、LDLとする)低下率45.0~58.3%、HDLコレステロール(以下、HDLとする)上昇率7.6~14.0%であり、効果は優れている。また、親水性であるため、チトクローム450(CYP)を介した代謝を受けにくい(相互作用が少ない)。
・動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年版が5年ぶりに改訂されており、総コレステロール値を削除し、LDLの値等を指標にしている。また、診断基準の対象を「高脂血症」からより広い概念の「脂質異常症」に変更になっている。
・脂質異常症の診断基準は高LDLコレステロール血症(LDL≧140mg/dL)、低HDLコレステロール血症(HDL<40mg/dL)、高トリグリセライド血症(トリグリセライド≧150mg/dL)である。
<Q1>新ガイドラインで総コレステロールが削除された理由は?
<A1>LDLが高くなくてもHDLが高いため、総コレステロールが高くなる場合がある。冠動脈疾患のリスクを判断する上ではLDLを指標とする方が望ましいためである。
<Q2>スタチンには多彩な効果があり、アルツハイマー病の予防や骨粗鬆症の予防に効果があると言われていますが、実際にはエビデンスはありますか?
<A2>論文には掲載されているが、明確なエビデンスは現時点ではない、今後の研究に期待したい。
<Q3>メバロチンとリピトールは、朝食後と夕食後の服用では効果に差がなく、リポバスとローコールは、夕食後服用で効果が高いと言われていますが、クレストートはどちらになりますか?
<A3>クレストールはメバロチンとリピトールと同様に朝食後と夕食後の服用で効果に差はない。また、食事の影響も受けない。
<Q4>HDLを直接上げる薬剤はありますか?
<A4>現時点で市販されていない。今後開発される可能性がある。
<Q5>クレストールの欠点は一包化できないことがありますが、今後は一包化可能な製剤を開発する予定はありますか?
<A5>物性的な問題で吸湿性があり、現時点では一包化可能な製剤は開発していない。
<Q6>LDLはどの程度まで下げる必要がありますか。また、下げ止まりはありますか?
<A6>ガイドラインでは1次予防において、危険因子3以上でLDL<120mg/dL、2次予防(冠動脈疾患の既往)において、LDL<100mg/dLになっているが、LDLは70mg/dL以下が望ましい。LDLは40~50mg/dLまでは低下できるとされている。
<Q7>クレストールは日本で創薬され、海外で開発された後、逆輸入されていますが、こういう開発のメリットは?
<A7>日本での治験は遅くなるため、海外で開発した方が早く市販できるためである。
<Q8>クレストールの販売は、限定施設からされており、そうされた理由は?(従来の副作用は「事後報告型」であったが、「予防・予測対応型」の変更とも聞いていますが、また、腎毒性の懸念があったとも聞いていますが)
<A8>海外で開発されたため、日本人での臨床データが不足しており、限定施設(検査ができる大学病院等)で副作用の確認をしており、他のスタチンと同程度の副作用であった。米国でクレストートは腎毒性で不買運動が過去にあったが、現時点では否定されている。
<Q9>ゼチーアは、どういう評価をされていますか?
<A9>スタチン系薬剤で横紋筋融解症が疑われる場合は、ゼチーアの使用も良いと思われる。LDLの低下作用は理論的に考えてスタチンよりも弱いと思われる。