薬剤師修行ファイルNo.070823:喘息セミナー

2007年8月研修記録
★「吸入ステロイド喘息治療剤オルベスコ」【帝人ファーマ㈱学術部より】
オルベスコは今年6月から販売を開始し、シクレソニドを有効成分として、代替フロンを使用したスプレー型の吸入ステロイド喘息治療剤である。50μg、100μg及び200μgの3種類があり、1瓶の噴霧回数は50μg及び100μgは112回、200μgは56回である。
・オルベスコは様々な特徴を有するが、吸入ステロイド薬として最も大きな特徴は、肺組織内においてエステラーゼによる加水分解を受け、活性代謝物に変換されるプロドラッグである。未変化体が高脂溶性であること、活性代謝物が細胞内において可逆的に脂肪酸包合体を形成することから、高い肺内滞留性を持つことが期待される。
・オルベスコは完全溶解型製剤で、エアロゾルは1μm程度の微細粒子の割合が高く、肺内到達率が約52%と高率である。また、副作用発現率が低い可能性も期待されており、血漿タンパクとの結合率が高く(約99%)、肝臓での初回通過効果が高く、代謝され易いことから全身性副作用の発現率が低いと考えられる。また、プロドラッグであり、口腔内での活性化率が低いことより、「嗄声」や「ガンジタ症」などの局所性副作用の低減が考えられる。
・オルベスコの最大の特徴は、長時間作用性のため、1日1回投与が可能になっている。ただし、1日の最大投与800μgを投与する場合は、朝、夜の1日2回に分けて投与する。また、1日1回投与の場合は夜に投与することが望ましい。
・オルベスコは新医薬品であるため、2008年6月末日までは、投薬は14日分を限度とされており、1瓶しか調剤できない。また、スペーサーなしで使用可能であるが、スプレー型吸入剤の欠点である残量がよくわからないとの指摘があるため、残量がある程度(約1/2、約1/3)わかる装置を無償提供している。

★成人喘息治療の現状
・日本における喘息死は、年々減少しているが、欧米と比較すると、喘息死の比率は高いのが現状であり、日本では吸入ステロイドの使用頻度が低いのが原因である。吸入ステロイドが普及していない理由として、国民性があり、吸入している所を他人に見られたくない心理があり、また、ステロイドに対する恐怖感(副作用)がある。
・吸入ステロイドのコンプライアンスが問題になっている。患者の意識調査において、コンプライアンスが守り易い薬剤は、テオフィリン製剤(内服薬)→β刺激剤(塗布剤)→吸入ステロイドやβ刺激剤(吸入剤)になっているのが現状である。吸入ステロイドのコンプライアンスを良くするためには、喘息治療の動悸付けが必要である。特に、旅行時に吸入ステロイドが持参されないのが問題になっている。

★吸入ステロイド療法の実際    
・吸入ステロイド剤はアドエアとオルベスコが新しく市販されたため、選択肢が多くなり、それぞれの製品の特徴を理解し、コンプライアンスを重視した薬剤選択が重要である。
・フルタイド及びセレベントのロタディスクタイプは、患者指導に時間がかかるため、最近は使用されなくなりつつある。ディスカスタイプは患者指導に時間がかからず、コンプライアンスが確認しやすいため、ディスカスタイプが主流になっている。
・オルベスコは1日1回でコンプライアンスの向上が期待されるが、軽症・中等症患者には1日1回の必要があるが、重症患者は1日2回を望んでいるのも現状である。
・吸入ステロイド剤の中止や減量は、ガイドラインでは3ヶ月間で見直すことになっているが、季節変動があり、1年間は継続する方が望ましい。