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薬剤師修行ファイルNo.070224:糖尿病治療

2007年2月研修記録
セイブルグリミクロン及びメルビンの製品紹介【大日本住友製薬㈱学術推進部より】
・セイブル錠は、2006年1月に販売を開始した糖尿病食後過血糖改善剤(αグルコシダーゼ阻害薬)であり、三和化学研究所が製造販売し、大日本住友製薬㈱がプロモーション提携をしている。食後高血糖を是正することは、合併疾患を予防する上で非常に重要であり、死亡率の低下になる。
・セイブル錠の特徴は、「早い、やさしい、強い」である。「早い」は食後開始後2時間値の血糖値の低下は、競合品(ベイスンやグルコバイ)と同じである。しかし、食後開始後1時間値の血糖値の低下は、競合品よりも効果が良く、即効性がある。「やさしい」は副作用である腹部膨満感や放屁増加は競合品より少ない。「強い」は効果が競合品よりも高い。
・グリミクロンは2型糖尿病薬物治療の初期段階に適した薬剤である。β細胞に過度な負担をかけることなく、ブドウ糖に対する感受性を高める作用がある。
・メルビンの作用機序として、AMPキナーゼを促進することが明確になり、多くの作用が説明できることになった。SU薬の欠点である体重増加もなく、耐糖能障害から糖尿病への進展が抑えられるため、一次予防薬として期待されるようになってきた。
・大日本住友製薬㈱は糖尿病領域に注力しており、メルビンの高用量製剤(メルビンの用量は欧米での用量に比べて3分の1程度と少ない)や新しい作用機序の糖尿病治療薬を開発中である。

★糖尿病非薬物療法を継続するためのポイント
・食事療法のポイントは野菜をゆっくり食べることが重要である。摂取カロリーを自覚していただくため、模擬食品(肉、野菜等)を利用して、カロリー当てゲームをしている。食事療法を継続させるポイントとして、「ほめる」ことが大事である。
・運動療法は患者の状況により、心拍数(例えば、110/分)を設定して、運動していただく。単純な運動は長続きしないため、ゲーム(卓球は好評)性を加味する。
・教育入院は2週間で実施している。血糖コントロールの見直し、合併症の検査及び糖尿病の知識修得の3項目を重点的に実施している。短期間で効果を上げている。
・外来集団指導は3ケ月に1回糖尿病教室を実施している。糖尿病患者に糖尿であることを自覚していただくことが重要である。米国では糖尿病患者は3ケ月に1回程度しか受診しない。自己管理が大事であることが啓蒙されている。

★糖尿病網膜症治療の動向
・視覚障害の原因として、第1位は緑内障(約20.7%)であるが、第2位は糖尿病網膜症(約19.0%)である。また、失明では糖尿病網膜症が第1位になっている。糖尿病が増加しており、今後は糖尿病網膜症も増加すると予測される。
・糖尿病網膜症の治療は、手術(レーザー、硝子体)が基本であるが、薬物治療剤(血管新生の抑制)の開発(第Ⅱ相臨床試験終了段階)も進んでいる。また、内科医と眼科医が連絡を蜜にし(内科医からの紹介率が約40%しかなく、時期が遅い)、協力することも重要である。
・糖尿病網膜症患者には日本眼科協会で作成した糖尿病眼手帳を配布している。手帳の内容は次回受診日(再院率が低いため)、眼圧、血糖値、眼の自覚症状などが記入できる。

薬剤師修行ファイルNo.070512:糖尿病治療

2007年5月研修記録
★糖尿病の治療戦略2007 ~ 経口剤をどう使いこなすか ~
・糖尿病では細小血管障害(網膜症・腎症・神経障害)及び大血管障害(虚血性心疾患・脳血管障害など)にも注意する必要である。日本糖尿病学会ではHbA1Cを血糖コントロールの指標とし、6.5%未満を「良」、6.5~7%「不十分」、7%以上を「不良」としているが、細小血管障害の進展抑制を期待した血糖管理目標である。大血管障害では不十分であり、HbA1Cは5.8%未満を目指す必要がある。
・HbA1Cの指標よりもインスリンが分泌していることが確認できる食後2時間後の血糖値の測定が重要であり、早期からの治療介入と薬剤選択がポイントになる。
・糖尿病治療の主役であったSU薬の単独治療でHbA1C6.5%未満を維持することは非常に難しいと考えている。SU薬は最後に使う薬剤と位置付け、インスリン分泌を促進させないα―グルコシダーゼ阻害剤、インスリン抵抗改善剤及びビグアナイト剤を最初に使用するべきである。
・インスリン抵抗改善剤であるアクトスは、血糖低下作用を長時間維持できることが特長であり、複数の臨床試験で報告されている。また、大規模臨床試験において、アクトスは脳卒中の再発リスク(3年間の追跡調査)が47%減少している。この理由として、脳虚血の保護作用、トリグリセライドの低下、HDLコレステロールの増加がある。
・アクトスを投与する上で注意すべきは、浮腫と体重増加である。30mgから開始すれば、HbA1Cはすぐに反映されないが、空腹時あるいは随時血糖値はほとんどの場合、投与2週間以内に低下する。また、アクトスの浮腫出現時の対応として、減塩指導、アクトスの減量及び利尿剤の投与を実施する。(スピロノラクトンとサイアザイドの単独又は併用投与)
・ベイスンを投与して効果が出ないのは、食事のバランスが悪いからである。理想的な栄養バランスは糖質60%、脂質25%及び蛋白質15%である。糖質60%でベイスンの効果を得ることができるが、糖質40%になるとベイスンの効果は期待できない。
・ビグアナイト剤であるメルビンは、日本では1日750mgまでの使用になっているが、米国では1日3000mgまで使用されている。効果は用量依存性があるため、日本の用量では効果が弱い。ただし、量を多くすると、胃腸障害及び下痢の副作用が生じる。2~3年後に高用量のメルビンが日本でも市販される予定である。
・薬物療法で重要なことは安全性であり、低血糖を起こさせないことである。一度、低血糖を起こした患者さんは薬を服用しなくなるだけでなく、通院しなくなり、手遅れになる場合がある。

★ベネット錠について【武田薬品工業㈱より】
・ベネット錠(17.5mg)週1回製剤は、今年4月に製造承認の許可を得て、6月に新発売を予定している。淡紅色のフィルムコーティング錠で、大きさは楕円形(長径8.1mm、短径4.6mm、厚さ3.4mm)で、フォサマック(ボナロン)35mg錠(長径10.3、短径5.6mm、厚さ3.6mm)より小さいため、服用しやすくなっている。
・ベネット錠(17.5mg)週1回製剤は、包装に工夫をしており、大きな文字で「のみ方」はコップ一杯の水で(約180cc)かまずに飲んで下さい、「のんだ後」少なくとも30分は横にならず、水以外は飲食しないで下さい、「のみ忘れた時」気づいた日の翌朝に1錠のんで下さい。漢字を使用しないでポイントは赤い文字で記載している。1シートには1錠入りのみの包装(フォサマック35mg錠は1シートに1錠入りと2錠入りの2包装がある。なお、ボナロン35mg錠は1シートに2錠入りの包装のみ)とし、調剤過誤の防止となる。

薬剤師修行ファイルNo.070517:糖尿病教育

2007年5月研修記録
★楽しく患者をやる気にさせる糖尿病教育―患者の不安を解消し、コンプライアンスを高める薬物療法
・国民意識調査において、健康情報の収集は第1位がテレビ(71.4%)で新聞(35.9%)、雑誌(33.1%)、知人及び友人(31.3%)、家族(23.1%)であり、第6位に医療機関(20.8%)がある。医療機関の情報が上位になる必要があり、医療関係者のライバルは「みのもんた」である。医療関係者の目指すものは「患者さんの豊かな人生」であるが、テレビは「視聴率」である。
・糖尿病の予防のために、糖尿病合併症の怖さについて説明し、今のうちに食生活をかえることの意義についてわかりやすい言葉で説明しても「残せない」「面倒だ」などと言い訳をする患者さんは多い。これを心理学では「抵抗」と呼んでいる。強くおどせばおどすほど、本音を隠くしたり、来院しなくなる。これはイソップ物語の「北風と太陽」と同じであり、力に対して力(説教型はほとんど意味がない)で応じることではなく、アプローチを変える必要がある。
・糖尿病教室を開催している病院は多くなっているが、情報提供型では「つまらない教室」になるため、体験学習型で「楽しい教室」にする必要がある。
・糖尿病患者は、なかなか数字を覚えないため、歴史と同じで「いい国(1192年)つくろう鎌倉幕府」のように空腹時血糖の正常値は70~110mg/dlのため、コンビニの宣伝ではないが、「セブン・イレブンいい気分」を覚えていただく。HbA1cは数字に30を加えて、体温に例えると覚えやすい。すなわち、「36.5度(6.5%)までは平熱、血糖コントロールはまずまず。37度(7.0%)を超えると、ちょっと熱が出て要注意、38度(8.0%)を超えていると、かなり高熱で、入院しなければならない。
・初めての患者で、「他の医院でどういう薬を服用していますか?」の問いに対して、「白い薬」や「白い錠剤」とかの返事がほとんどである。患者は薬に興味がないのである。薬剤師は薬を投薬する際、「糖尿の薬です」ではなく、薬の名前を具体的に「ベイスン」とか「アクトス」と説明し、薬の名前を患者に覚えてもらうよう服薬指導をお願いしたい。また、薬剤師は一方的に患者に説明しても、ほとんど患者の記憶に残っていない。患者から質問される薬剤師になってもらいたい。質問事項に対する答えは患者の記憶に残る。

★製品紹介「グルファスト錠」について【キッセイ薬品工業㈱学術部より】
・グルファスト錠は、自社で開発した速効型インスリン分泌促進薬であり、武田薬品と共同で販売して3年が経過している。グルファストのイメージは「早く」と「強く」であり、箸をもったら飲もうである。同種同効品であるスターシス(ファステック)と比較して、グルファスト錠の方が効果は速くて強い。
・グルファスト錠は、服用後速やかに効果を発揮し、インスリン分泌を自然なパターンに近づけて食後の高血糖を改善し、作用持続時間が短いため、空腹時の低血糖を起こしにくい特長がある。
・最近、武田薬品工業と共同で、アクトスとの併用効果について、効能追加を申請している。臨床試験の結果、グルファストとアクトスを併用することにより、アクトス単独群より、低血糖を起こすことなく、HbA1cを有意に改善させることが確認された。また、グルファストとベイスンとの併用効果についても、臨床試験を実施し、良好な結果が得られており、効能追加の申請をする予定である。服用時期が食直前で同じであり、コンプライアンスの向上も期待できる。

薬剤師修行ファイルNo.071013:糖尿病

2007年10月研修記録
★「グルファスト錠」について【キッセイ薬品工業㈱より】
・糖尿病治療の目標は、健康な人と変わらない日常生活の質(QOL)を維持し、かつ健康寿命を確保することである。糖尿病患者を対象とした疫学調査では、非糖尿病者に比べて心筋梗塞、脳卒中の発症年齢が男女とも平均で15年早いことが示されており、糖尿病患者での心血管イベントの抑制が極めて重要であることがわかる。心血管イベントは食後高血糖と強く相関することが、疫学調査で明確になっている。
・早期の治療戦略において、グリニド系薬(グルファスト、ファスティック、スターシス)及びα-グルコシターゼ阻害薬(ベイスン、セイブル)は重要な位置を占める。特に、グルファストはα-グルコシターゼ阻害剤への追加投与が2007年5月に承認(併用効果がある)されたことから、その臨床効果が期待される。
・グルファストは、服用後速やかに効果を発揮し、インスリン分泌を自然なパターンに近づけて食後の高血糖を改善し、作用持続時間が短いため、空腹時の低血糖を起こしにくい特徴がある。また、グルファストはファスティック(スターシス)と比較して、相互作用や禁忌も少なく、使用しやすい薬剤である。
・グルファストは食直前5分以内に服用する必要があり、食事5分以上前では低血糖の危険があり、また、食事中や食後では十分な効果が発現されない。箸を持ったらグルファストと覚えて欲しい。

★「2型糖尿病の初期治療」--その病態と経口薬処方の組み立て方—
・糖尿病患者は約700万人まで膨れ上がっており、境界型(糖尿病予備軍)も含めると約2000万人以上と言われている。受診率は約50%しかなく、残りの患者は放置されているのが現状である。手遅れになっている場合が多いため、早期の受診が望まれる。
HbA1Cの指標よりもインスリンが分泌していることが確認できる食後2時間後の血糖値の測定が重要であり、早期からの治療介入と薬剤選択がポイントになる。
・2型糖尿病の初期治療の薬剤は、グリニド系薬、α-グルコシターゼ阻害剤、インスリン抵抗改善剤及びビグアナイド剤から選択し、SU薬は可能なかぎり使用しない。SU薬は最後に使用すべき薬剤である。
・グルファストとSU薬はどちらもインスリン分泌作用はあるが、膵β細胞に対する機序が異なり、グルファストによる2回連続刺激により、2回ともインスリン放出が惹起されたが、SU薬では2回目の刺激に対する応答性が消失した。SU薬は低血糖の可能性が否定できない。
食後血糖値を決定する最も重要な因子は肝臓の糖取り込み率である。グリニド系薬やα-グルコシターゼ阻害薬は、肝臓の糖取り込みを促進して食後血糖応答を正常化する治療法といえる。すなわち、グリニド系薬はインスリン分泌パターンを改善してインスリンを食後速やかに肝に供給する一方で、α-グリコシターゼ阻害薬は食直後の肝臓への糖の大量流入を抑えて血糖値の上昇を遅らせる。その結果、血糖値上昇とインスリン上昇のタイミングが合致し、食後血糖値応答が正常化しやすくなる。(グルファストとベイスンの併用効果の理由)
・インスリン抵抗改善剤、SU薬及びグリニド系薬を車に例えると、インスリン抵抗改善薬は重荷(荷物)そのものを軽減させる働きがあり、SU薬は加速が悪くアクセル踏みっぱなし状態、グリニド系薬は加速が良く経済的、ただし、食事のたびにアクセルを踏まなければならない。
・ベザトールは、TG低下作用やHDL上昇作用はあるが、最近、インスリン抵抗改善作用が認められており、メタボリックシンドローム患者に適している。