2007年5月研修記録
★楽しく患者をやる気にさせる糖尿病教育―患者の不安を解消し、コンプライアンスを高める薬物療法
・国民意識調査において、健康情報の収集は第1位がテレビ(71.4%)で新聞(35.9%)、雑誌(33.1%)、知人及び友人(31.3%)、家族(23.1%)であり、第6位に医療機関(20.8%)がある。医療機関の情報が上位になる必要があり、医療関係者のライバルは「みのもんた」である。医療関係者の目指すものは「患者さんの豊かな人生」であるが、テレビは「視聴率」である。
・糖尿病の予防のために、糖尿病合併症の怖さについて説明し、今のうちに食生活をかえることの意義についてわかりやすい言葉で説明しても「残せない」「面倒だ」などと言い訳をする患者さんは多い。これを心理学では「抵抗」と呼んでいる。強くおどせばおどすほど、本音を隠くしたり、来院しなくなる。これはイソップ物語の「北風と太陽」と同じであり、力に対して力(説教型はほとんど意味がない)で応じることではなく、アプローチを変える必要がある。
・糖尿病教室を開催している病院は多くなっているが、情報提供型では「つまらない教室」になるため、体験学習型で「楽しい教室」にする必要がある。
・糖尿病患者は、なかなか数字を覚えないため、歴史と同じで「いい国(1192年)つくろう鎌倉幕府」のように空腹時血糖の正常値は70~110mg/dlのため、コンビニの宣伝ではないが、「セブン・イレブンいい気分」を覚えていただく。HbA1cは数字に30を加えて、体温に例えると覚えやすい。すなわち、「36.5度(6.5%)までは平熱、血糖コントロールはまずまず。37度(7.0%)を超えると、ちょっと熱が出て要注意、38度(8.0%)を超えていると、かなり高熱で、入院しなければならない。
・初めての患者で、「他の医院でどういう薬を服用していますか?」の問いに対して、「白い薬」や「白い錠剤」とかの返事がほとんどである。患者は薬に興味がないのである。薬剤師は薬を投薬する際、「糖尿の薬です」ではなく、薬の名前を具体的に「ベイスン」とか「アクトス」と説明し、薬の名前を患者に覚えてもらうよう服薬指導をお願いしたい。また、薬剤師は一方的に患者に説明しても、ほとんど患者の記憶に残っていない。患者から質問される薬剤師になってもらいたい。質問事項に対する答えは患者の記憶に残る。
★製品紹介「グルファスト錠」について【キッセイ薬品工業㈱学術部より】
・グルファスト錠は、自社で開発した速効型インスリン分泌促進薬であり、武田薬品と共同で販売して3年が経過している。グルファストのイメージは「早く」と「強く」であり、箸をもったら飲もうである。同種同効品であるスターシス(ファステック)と比較して、グルファスト錠の方が効果は速くて強い。
・グルファスト錠は、服用後速やかに効果を発揮し、インスリン分泌を自然なパターンに近づけて食後の高血糖を改善し、作用持続時間が短いため、空腹時の低血糖を起こしにくい特長がある。
・最近、武田薬品工業と共同で、アクトスとの併用効果について、効能追加を申請している。臨床試験の結果、グルファストとアクトスを併用することにより、アクトス単独群より、低血糖を起こすことなく、HbA1cを有意に改善させることが確認された。また、グルファストとベイスンとの併用効果についても、臨床試験を実施し、良好な結果が得られており、効能追加の申請をする予定である。服用時期が食直前で同じであり、コンプライアンスの向上も期待できる。