2007年5月研修記録
★エンブレルの製品紹介【ワイス㈱学術部より】
・エンブレルは完全ヒト型可溶性TNFα/LTαレセプター製剤で、2005年3月に販売を開始した関節リウマチ治療剤であり、生物学的製剤に位置付けされる。
・エンブレルの特性は、抗リウマチ剤で効果不十分な関節リウマチ患者に対し、単剤で優れた効果が認められており、投与開始2週間後にACR20(米国リウマチ学会での評価基準で疼痛関節数、腫脹関節数などの7項目で20%改善した率、また、ACR50及びACR70の評価もある)において改善が認められている。また、投与方法は、週2回の皮下注射で、医師により、適用が妥当と判断された場合は自己注射も可能である。
★生物学的製剤によるリウマチ治療 ~患者さんに喜ばれる使い方~
・日本のリウマチ患者は約70万人で毎年1万5000人が発症している。3年後には要介護になる率が高く、生命予後も短いため、早期の治療介入が必要である。
・関節リウマチの治療は「手術」、「薬物治療」、「教育」及び「リハビリ」の4本柱で行っている。リウマチ患者の97.5%に薬物治療をしている。薬剤の使用頻度は、抗リウマチ剤が77.1%、鎮痛剤が73.7%、ステロイド剤が60.5%及び生物学的製剤が4.5%である。
・日本で市販されている生物学的製剤は、レミケードとエンブレルの2品目がある。開発中の薬剤が4~5製剤あり、今後品目が増える。
・リウマチの発症機序は十分に解明されていないが、リウマチ患者では活動性が高いほど血清のTNFαが高値で、関節破壊の進行によく相関している。また、TNFαは関節滑膜(骨を壊す肉芽組織)にも強く発揮する。レミケードとエンブレルの2品目は抗TNF療法とも言われている。抗リウマチ薬で最も効果が高いメトトレキサートでも達成できなかった関節破壊の進行停止(寝たきり予防)という最も重要な項目にも効果がある。
・TNFαは、生体防衛に非常に重要な分子であるため、この働きを抑えると感染症が起きるため、「結核」や「肺炎」に注意する必要がある。生物学製剤を使いこなすには専門医師でないと使いこなすのは困難であり、「諸刃の剣」である要素がある。
・エンブレルは国内で第Ⅱ相臨床試験は実施しているが、第Ⅲ相臨床試験は国内で実施していない(ブリッジ試験で米国の臨床試験を参照)ため、市販後の全症例調査を義務付けられている。
・レミケードの投与経路は点滴静注で、用法・用量は0、2、6週、その後は8週ごと3mg/Kg、メトトレキサートの併用が必須である。一方、エンブレルの投与経路は皮下注射(自己注射も可)、用法・用量は10~25mgを1日1回、週2回、メトトレキサートの併用は必須(併用時の有効性は高い)ではない。2剤の大きな違いは、レミケードはミサイル療法(一度に対応する)であり、エンブレムはフォークダンス療法(相手が次々に異なって対応する)と言われている。
・レミケードとエンブレルの使い分けは確定していない。頻回の来院や自己注射(注射が怖い、指の変形で注射ができない、家族の援助等)が困難な患者にはレミケードを使用し、メトトレキサート投与禁忌例の患者にはエンブレルを使用する。
・生物学的製剤の中止・変更は、高価な薬剤であるため、早期に対応し、レミケードは投与6週間後、エンブレルは投与4週間後で判断する必要である。なお、患者の医療費負担は、1年間の患者費用(3割負担の場合)はレミケードが約40万円、エンブレルが約48万円になる。
・生物学製剤の今後の方向性として、炎症性サイトカインにはTNFα以外にもIL-1、IL-6があり、IL-1、IL-6を抑制する薬剤が開発中であり、免疫細胞に関与するリンパ球であるB細胞、T細胞に注目した製剤も開発中である。
【ニュース報道】リウマチ薬、79人死亡・2万人が使用の「エンブレル」