2007年10月研修記録
★「グルファスト錠」について【キッセイ薬品工業㈱より】
・糖尿病治療の目標は、健康な人と変わらない日常生活の質(QOL)を維持し、かつ健康寿命を確保することである。糖尿病患者を対象とした疫学調査では、非糖尿病者に比べて心筋梗塞、脳卒中の発症年齢が男女とも平均で15年早いことが示されており、糖尿病患者での心血管イベントの抑制が極めて重要であることがわかる。心血管イベントは食後高血糖と強く相関することが、疫学調査で明確になっている。
・早期の治療戦略において、グリニド系薬(グルファスト、ファスティック、スターシス)及びα-グルコシターゼ阻害薬(ベイスン、セイブル)は重要な位置を占める。特に、グルファストはα-グルコシターゼ阻害剤への追加投与が2007年5月に承認(併用効果がある)されたことから、その臨床効果が期待される。
・グルファストは、服用後速やかに効果を発揮し、インスリン分泌を自然なパターンに近づけて食後の高血糖を改善し、作用持続時間が短いため、空腹時の低血糖を起こしにくい特徴がある。また、グルファストはファスティック(スターシス)と比較して、相互作用や禁忌も少なく、使用しやすい薬剤である。
・グルファストは食直前5分以内に服用する必要があり、食事5分以上前では低血糖の危険があり、また、食事中や食後では十分な効果が発現されない。箸を持ったらグルファストと覚えて欲しい。
★「2型糖尿病の初期治療」--その病態と経口薬処方の組み立て方—
・糖尿病患者は約700万人まで膨れ上がっており、境界型(糖尿病予備軍)も含めると約2000万人以上と言われている。受診率は約50%しかなく、残りの患者は放置されているのが現状である。手遅れになっている場合が多いため、早期の受診が望まれる。
・HbA1Cの指標よりもインスリンが分泌していることが確認できる食後2時間後の血糖値の測定が重要であり、早期からの治療介入と薬剤選択がポイントになる。
・2型糖尿病の初期治療の薬剤は、グリニド系薬、α-グルコシターゼ阻害剤、インスリン抵抗改善剤及びビグアナイド剤から選択し、SU薬は可能なかぎり使用しない。SU薬は最後に使用すべき薬剤である。
・グルファストとSU薬はどちらもインスリン分泌作用はあるが、膵β細胞に対する機序が異なり、グルファストによる2回連続刺激により、2回ともインスリン放出が惹起されたが、SU薬では2回目の刺激に対する応答性が消失した。SU薬は低血糖の可能性が否定できない。
・食後血糖値を決定する最も重要な因子は肝臓の糖取り込み率である。グリニド系薬やα-グルコシターゼ阻害薬は、肝臓の糖取り込みを促進して食後血糖応答を正常化する治療法といえる。すなわち、グリニド系薬はインスリン分泌パターンを改善してインスリンを食後速やかに肝に供給する一方で、α-グリコシターゼ阻害薬は食直後の肝臓への糖の大量流入を抑えて血糖値の上昇を遅らせる。その結果、血糖値上昇とインスリン上昇のタイミングが合致し、食後血糖値応答が正常化しやすくなる。(グルファストとベイスンの併用効果の理由)
・インスリン抵抗改善剤、SU薬及びグリニド系薬を車に例えると、インスリン抵抗改善薬は重荷(荷物)そのものを軽減させる働きがあり、SU薬は加速が悪くアクセル踏みっぱなし状態、グリニド系薬は加速が良く経済的、ただし、食事のたびにアクセルを踏まなければならない。
・ベザトールは、TG低下作用やHDL上昇作用はあるが、最近、インスリン抵抗改善作用が認められており、メタボリックシンドローム患者に適している。