薬剤師研修ファイルNo.071214:ABR剤(選択的AT1受容体ブロッカー)

2007年12月研修記録
★ ディオバン錠について【ノバルティス ファーマ株式会社より】
・高血圧は、頭痛、めまい、肩こり、動悸、むくみなどの症状を伴うことがある。
・血圧が高いと血管や心臓にダメージを与える。
・生活習慣や体質により血圧が高くなる。
・脳卒中、心筋梗塞、心不全、腎不全、糖尿病、ストレス、肥満、喫煙、運動不足、過労などが血圧を上げる因子となる。
・高齢者は、140/90mmHg以下(収縮期血圧/拡張期血圧)、若・中年層は、130/85以下、糖尿病・腎不全の患者は、120/80以下が管理目標値である。
・降圧剤のシェア(金額ベース)は、ARB剤が55%、Ca拮抗剤16%である。ただし、処方数では、Ca拮抗剤がARB剤を上回っている。
ACE阻害剤は、アンジオテンシンⅠ → アンジオテンシンⅡ(昇圧物質)を変換する酵素を阻害することにより降圧効果をもたらす。一方で、ブラジキニンの分解を阻害するためブラジキニンが蓄積して副作用である空咳が生じる。
・ABR剤は、アンジオテンシンⅡが結合するAT1受容体(血圧上昇、心血管障害を起こす受容体)をブロックすることにより降圧効果を示す。
・ディオバン錠は、AT1受容体を選択的にブロックする一方で、AT2受容体(AT1受容体と拮抗して働き血圧効果、心血管保護をもたらす。)はブロックしないため、AT1受容体に結合できないアンジオテンシンⅡがAT2受容体を刺激することによる降圧作用も有する。
・ディオバンは、AT1受容体選択性がAT2受容体の30,000倍であり、他のABR剤と比べて最も選択性か高い。(ニューロタンは1,000倍、ミカルディスは3,000倍、ブロプレスは10,000倍、オルメテックは12,500倍)
・日本のABR剤シェアは、ディオバンはブロプレスについで2番目である。ニューロタンは、プレミネント(利尿剤との合剤)にシフトしている。
JIKEI HEART STUDY は、日本人の高血圧患者を対象として従来の降圧薬治療(Ca拮抗薬など)にディオバンを上乗せ投与した群と従来の降圧薬治療を増強した群(ABR剤以外で強化)とで比較検討を行った大規模臨床試験である。降圧効果は、ディオバン上乗せ群で平均8.2/4.7(収縮期血圧/拡張期血圧)の降圧が認められた。(131/77mmHg) 従来降圧治療強化群では、平均7.2/3.7の降圧が認められた。(132/78mmHg)
ディオバンを48ヶ月(4年間)上乗せ投与した結果、従来降圧治療強化群より脳卒中の発生率は40%、心不全発生率は47%、狭心症発生率は65%のリスクを低減できた。ただし、リスク低減の有意差が生じてくるのは、18ヶ月以降であった。
・費用効果:ディオバン錠80mgは、151.1円/錠(1錠90日分13,599円)、ニューロタン錠50mgは、186.8円/錠(16,812円、差額3,213円)、ミカルディス錠40mgは171.5円/錠(15,435円、差額1,836円)、ブロプレス錠8mgは180.3円/錠(16,227円、差額2,628円)、オルメテック錠20mgは172.4円/錠(15,516円、差額1,917円)である。