薬剤師修行ファイルNo.070616:睡眠時無呼吸症候群

2007年6月研修記録
★睡眠時無呼吸症候群(以下SAS : Sleep Apnea Syndrome)と循環器疾患。
・2003年に山陽新幹線の運転手が居眠りをして、駅で止まらなかった事件があったが、この運転手がSASで夜間がよく眠れず、昼間の居眠りがあったことから、この疾患が有名になった。
・日本において、SASの有病率は人口の約4%で、200万人いると言われている。しかしながらなかなか気がつきにくく、いびきをかく程度で受診するのが恥ずかしいと言う理由でなどで、治療されていない方が多い。男性が女性の約8倍SASに罹患している。
・SASの原因は上気道の閉塞で起こることになるが、閉塞の原因は首まわりの脂肪沈着、アデノイド、舌が大きい、鼻が曲がっているなどがある。欧米では肥満な人がほとんどであるが、日本人は顎が小さいため、気道がふさがれやすく、必ずしも肥満な方だけではない。
・SASは生活習慣病とも言われており、肥満、高血圧、糖尿病、高脂血症が「死の四重奏」と言われているが、それにSASを加えて「死の五重奏」とも言われている。重症のSAS患者は9年後に合併症で約40%死亡している。
・SASの診断には終夜睡眠ポリグラフィを行う必要があり、呼吸に関する指標には、①口や鼻の気流、②胸の拡張収縮の動き、③腹の拡張収縮の動きがある。これらの3つを測定して、より正確なSASの診断ができる。
・SASには閉塞型(気道は閉塞しているが、胸・腹部は動いている)、中枢型(口からの換気停止とともに、胸・腹部の動きも止まっている)及び混合型(中枢型で無呼吸が始まり、途中から閉塞型になる)の3タイプがある。最も多いのが閉塞型である。
・閉塞型の重症度評価は、10秒以上の呼吸停止を1回とカウントし、1時間あたりの無呼吸低呼吸の回数が軽症は5回以上15回未満、中等症は15回以上30回未満、重症は30回以上と定義されている。
・SASは生活習慣病であるため、減量、禁煙、飲酒の制限(アルコールは上気道の筋肉を弱くするため、寝る前の飲酒は避ける)及び睡眠薬の減量(睡眠薬には無呼吸を悪化させるものがある)などがある。
・SAS治療の第一選択は、経鼻的持続陽圧呼吸治療法(nasal CPAP)である。CAPAは睡眠中に鼻マスクを装着し、睡眠中の鼻マスクから空気が一定圧で送られ、睡眠中に緩んだ喉の筋肉によって喉が塞がるのを防ぐことができる。CAPAの効果は夜間熟睡できるため、昼間の居眠りはなくなる。また。虚血性心臓病や脳血管障害の防止にもなり、拡張期血圧が低下するのも特徴である。CAPAはSASの重症度判定において、中等症以上で保険適用になり、自己負担(3割負担)は月に約五千円弱となる。CAPA以外の治療法にはマウスピースの装着や外科的手術がある。
・SASの薬物治療は補助的なものしかない。呼吸中枢刺激作用がある薬剤の中で、ヒスロンH、プロベラ、ダイアモックス及びテオフィリン製剤などがあるが、明確なエビデンスはない。