2007年6月研修記録
★「What is CKD?」
・日本における慢性透析患者は現時点で25万人を超えている。2010年には全世界で210万人が予測されており、日本はその内約7分の1を占めると予測されており、日本は透析患者密度の最も高い国である。透析患者にかかる医療費は1兆円を超えている。透析導入の最大原因である糖尿病性腎症がますます増加しており、末期腎不全患者を減らすことは待ったなしの状況である。
・「尿蛋白陽性などの腎疾患の存在を示す所見」もしくは「腎機能低下(糸球体濾過量が60mL/min未満)が3ヶ月以上続く状態を慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)と定義し、慢性腎臓病対策が全世界的に取り組まれている。
・CKDは新しい概念であり、今後の対策として、疫学データ収集、診療ガイドラインの普及、国の医療政策に反映させる、国際協調の4本柱で対応していく。
・CKDは一般的に自覚症状が乏しく、微量アルブミン尿、蛋白尿などの尿異常から始まり、徐々に腎機能が低下して末期腎不全に進行する。
・CKDの生活・食事指導には①水分の制限及び過剰摂取は有害である、②1日の食塩摂取量は6g未満にする、③肥満の是正、④禁煙、⑤ステージ3以上において、蛋白摂取量の制限(0.6g~0.8g/Kg/日)などがある。
・CKDは心血管疾患及び末期腎不全の発症の重要な危険因子である。CKDの治療にあたっては、血圧の目標は130/80mmHg未満で緩徐に降圧することが重要である。降圧剤の第一選択薬は腎保護作用のあるACE阻害剤又はARBであり、必要に応じて他の降圧薬を選択する。また、腎機能改善のため、ACE阻害薬とARBを併用する場合もある。ただし、血清クレアチニンの上昇と高カリウム血症には注意する必要がある。
・糖尿病はCKD対策の最重要課題である。糖尿病腎性の発症・抑制には、厳格な血糖値の管理が重要であり、HbA1Cは6.5%未満にする必要がある。
・CKDでは脂質代謝異常症の治療により蛋白尿の減少と腎機能低下抑制が期待される。また、LDLコレステロールは、120mg/dL未満(可能であれば100mg/dL未満)にコントロールすることが重要である。スタチンは脂質代謝異常を改善することで、腎機能が保持される。また、アルブミン尿や蛋白尿も減少させることも確認されており、CKDには推奨されている薬剤である。
・CKDの特徴に腎性貧血があり、心不全の増悪因子になるため、貧血の治療により生命予後が改善される。治療薬として、ヒト組替え型エリスロポエチン製剤がある。
★生活習慣病としてのCKD-日本人の心血管予防を目指して
・肥満者の半数以上は、高血圧になる。肥満者は脂肪細胞の肥大化が亢進しており、アンジオテンシンⅡの産生が高まっている。肥満の高血圧患者にはARB製剤の投与が重要になる。
・昨年報告された大規模臨床試験(CASE-J)において、ブロプレスの投与により、BMI≧27.5の患者さんの全死亡率がほぼ半減されている。この結果から、ブロプレスによる交感神経の抑制に注目している。
・肥満者では交感神経が活性化されているため、心拍数も有意に増加している。心拍数の増加、特に、朝の心拍数増加は心血管イベントの発現リスクを高める。ブロプレスは心拍数の低下が認められている。