薬剤師修行ファイルNo.070609:プレタール

2007年6月研修記録
★プレタール---最近のガイドラインをふまえて--- 【大塚製薬㈱ 学術部より】
・末梢性動脈硬化症(Peripheral Arterial Disease ;PAD)の新しい診療ガイドライン(TASCⅡ)が発表されPAD患者に対する薬物療法では、プレタールの3~6カ月投与が第一選択と推奨されているが、プレタールによる歩行距離改善は6つの無作為化比較試験のメタ解析の結果から、推奨グレードAとされた。
・プレタールの安全性を検証する目的で実施された大規模臨床試験(CASTLE試験)において、副作用頻度の比較では動悸、下痢、頭痛がプレタール群でやや多かったが、抗血小板薬で懸念される出血性副作用はプレタール群がプラセボ群に比べ低頻度であった。なお、プレタール群及びプラセボ群ともに基礎治療薬として、パナルジン又はプラビックスが併用されている。
・血栓形成に深く関与しているのは、①血管壁の性状変化、②血液成分の変化、③血流の変化という3つの要素が関与している。血管壁の性状変化は血管内皮細胞機能障害であり、プレタールは血管内皮機能を改善するといったユニークな特性がある。
・プレタールは剤形追加として、散剤(プレタール散20%)を2007年7月3日から新しく販売することになった。プレタール散20%の主な製剤的特性として、水なしでも服用可能であり、高齢者や嚥下機能の低下した患者でも服用可能である。また、わずかな芳香と甘みがあり、服用しやすく工夫している。

★最近の下肢閉塞性動脈硬化症の治療方針
・血管疾患には冠動脈疾患、脳動脈疾患及び末梢性動脈疾患(PAD)があるが、PAD患者の40~60%が冠動脈疾患及び脳動脈疾患を有している。PAD患者は心・血管系障害の合併率が高く、生命予後は極めて不良である。間歇性跛行患者の5年生存率は約70%、重症下肢虚血患者の5年生存率は50%以下である。PAD患者は大腸癌患者よりも生存率は低いのが現状である。
・PADの診断法として、四肢の血圧から得られる上腕、足関節血圧比(ankle brachial pressure index:ABPI)がある。ABPIは足関節収縮期血圧/上腕収縮期血圧の比であり、ABPIが0.9以下でPADの疑いがあり、ABPIが0.8以下でPADの可能性が高い。また、1.4以上の患者にも積極的なリスクファクターの改善が必要である。
・PADの全体的治療戦略として、リスクファクターの改善があり、禁煙、LDLコレステロール100mg/dl未満(ハイリスク患者は70mg/dl未満)、HbA1cは7.0%未満、血圧は140/90mmHg未満(糖尿病又は腎疾患がある場合は130/80mmHg未満)及び抗血小板療法がある。
・PADの主訴として、「冷感」や「しびれ感」があり、薬物療法には(PADの適用がある)プロスタグランジン製剤(ドルナー、プロレナールなど)、パナルジン、アンプラーク、エパデール及びプレタールがある。しかし、間歇性跛行症状に対する薬物療法にはプレタールが第一選択にすべきである。
・アスピリン及び他の抗血小板薬(パナルジン、プラビックス)は心血管イベントのリスク減少に確実な効果を有するため、PAD患者の長期治療において重要である。しかしながら、跛行の治療において抗血小板薬あるいは抗凝固薬の効果を示す試験は存在しない。
プレタールは心血管障害の適用はないが、プレタールを投与すると頻脈が起きるため、心血管イベントには使用しない方が望ましい。
・PADの中でも特に治療の難しいのが重症下肢虚血であるが、推奨できる薬物療法はないのが現状であり、今後の薬物の開発に期待したい。現時点ではワーファリンで対応している。