薬剤師研修ファイルNo.070210:高血圧治療

2007年2月研修記録
★プレミネント錠について【万有製薬㈱学術部より】
プレミネント錠は2006月12月に販売を開始した日本初の持続性ARB/利尿薬の合剤である。高血圧治療ガイドライン2004年において、少量の利尿剤は他の降圧薬の効果を高めるため、組成はニューロタン50mgとダイクロトライド(25mg)の半量の12.5mgとした。
・臨床試験(海外データ)において、収縮期血圧の血圧降下度(8~12週間投与)は、ニューロタン50mgで10.4mmHg、ブロプレス8mgで11.8mmHg、ディオバン80mgで10.9mmHgであったが、プレミネントで16.5mmHgであり、優れた降圧効果を示した。この理由はアンジオテンシンⅡによる血管収縮をブロックする作用とNa排泄促進作用である。
・プレミネントの相乗的薬理作用として、ニューロタンのカリウム上昇の副作用をダイクロトライドでカリウムを低下させるため、相殺される。また、ダイクロライトで尿酸を上昇させるが、ニューロタンで尿酸を下げる作用があるため相殺される。血圧は相乗効果があり、理想的な組み合わせである。
・プレミネントは過度な血圧低下のおそれ等があり、第一選択薬ではないが、次回の高血圧治療ガイドラインでは第一選択薬になる可能性がある。

★降圧薬治療は単剤か併用か
・2000例以上の高血圧患者を見ているが、使用する降圧薬は単剤34%、2剤40%、3剤17%であり、残りは4剤以上であり、降圧目標達成率は50%未満になっているのが現状である。また、単剤での達成率が低く、併用することにより達成率が高くなっている。
・臨床経験において、拡張期血圧100mmHg以上の患者には単剤では血圧がコントロールするのは困難であり、併用する必要がある。
白衣高血圧は収縮期血圧が高くなるが、拡張期血圧に変化はない。家庭血圧を測定させてから降圧薬の使用を考えている。白衣高血圧の現象は、患者と医師の慣れで解消できる場合もあるが、1ヶ月以内に解消できなければ、解消は困難である。
・大規模臨床試験において、ARB使用で血圧が目標値に達しない場合、ARBの増量で血圧を下げるには限界があり、Ca拮抗剤の併用で血圧を下げる方が良い。
・季節により、降圧薬の調整をしているが、少量の利尿剤の出し入れ(冬に利尿剤を追加)をするのが理想である。

★厳格な降圧と臓器保護ARBと利尿剤合剤からのアプローチ
・高血圧治療ガイドライン2004年において、厳格な降圧目標を示しており、目標達成率が低く、達成に向けて努力する必要がある。
・70歳以上の高血圧患者において、拡張期血圧は目標達成率が高いが、収縮期血圧は目標達成率が極めて低いのが現状である。なお、高齢者は収縮期血圧が高くなるが、拡張期血圧は高くならない傾向がある。この理由は心臓の働きから説明可能である。
・日本において、降圧薬に利尿剤があまり使用されていなかった理由として、日本のサイアザイド系利尿は用量が多いため、副作用が出やすく、プレミネントは適正量である。また、厚生労働省にも利尿剤の減量を働きかけているが、反応が鈍いのも現状である。
・利尿剤は人種差があり、ラシックスはヘキスト(ドイツの製薬会社)で開発されたため、ドイツ人には向いているが、日本人には向いているかは疑問である。日本人に向いている利尿剤の開発も必要であると考えている。

【ニュース情報】プレミネント錠:2008年1月より「投薬期限解除」のお知らせ