2008年2月研修記録
★プレミネント錠の薬理作用【万有製薬㈱学術部より】
・食塩とレニン・アンジオテンシン(RA)系は密接な関係がある。食塩摂取の少ない太古の時代においては、RA系は食塩を腎臓から失われないようにし、かつ、血圧を維持していた。現在は食塩の過剰摂取時代であり、RA系を抑制しても降圧が不十分であるケースがある。
・食塩摂取量とRA系は天秤の両端にある重りのような関係にあり、食塩摂取量が低下すればRA系が亢進し、逆に、食塩摂取量が増大すればRA系が抑制されて、血圧には大きな変化はみられない。したがって、減塩に伴って活性化されるRA系の作用を抑制すれば、大きな降圧が得られる。
・プレミネント錠はARB/利尿薬の合剤であり、RA系を抑制すると腎よりナトリウム排泄を促進する。利尿薬は体液量を減少させて降圧効果を示すが、一方ではRA系を活性化することにより、その降圧効果及びナトリウム排泄効果は弱減する。したがって、ARB/利尿薬配合剤はAⅡの血管収縮作用の阻止による血管拡張と利尿効果がともに増強され、両者の降圧効果が相乗的に発現する。一方、強力な降圧作用と利尿作用があるため脱水などに対する注意も必要である。
・プレミネントの相乗的薬理作用として、ニューロタンのカリウム上昇の副作用をダイクロトライドでカリウムを低下させるため、相殺される。また、ダイクロライトで尿酸を上昇させるが、ニューロタンで尿酸を下げる作用があるため相殺される。血圧は相乗効果があり、理想的な組み合わせである。
★認知症と血管リスク
・日本における認知症患者は約190万人になっており、高齢化が進む2050年には400万人以上になると予想されている。最近、脳血管性認知症よりもアルツハイマー型認知症が多くなっている。
・アルツハイマー病は加齢に伴って発症し、特に65歳以降その発症率は急増(性差では女性が多い)しており、社会的問題になっている。
・アルツハイマー病と高血圧は相関関係がある。高血圧患者において、未治療群と治療群(降圧剤を服用)と比較して、未治療群の方がアルツハイマーの発症が有意に高くなることを確認している。血管障害が関与していると考えられる。
・アルツハイマーの薬物治療として、現在使用できるのはアリセプトだけであるが、開発中の薬剤が3品目あり、その中の1品目は臨床試験が終了しており、申請中である。アリセプト及び開発中の3品目は根治治療ではなく、アルツハイマーの進行を遅らせる作用である。根治治療が期待されるのがワクチン療法である。
・アルツハイマー病は脳に蓄積するアミロイドβ蛋白が凝集して形成されたものである。ワクチン療法はアミロイドβ蛋白を抑制する方法であり、開発中である。
★利尿薬
・利尿薬は食塩感受性の高い高血圧患者(食塩を多く摂取している)には効果があり、1950年代より広く使用されている。脳卒中の発生や虚血性心疾患の発症を低下させる。
・利尿薬は尿を出す薬剤であり、その効果は、吸収、体内動態、各種疾患における腎血行動態や尿細管機能の変化、神経体液性因子の影響を大きく受ける。一方、利尿薬の種類により尿細管機能や腎血行動態に及ぼす影響に違いが見られる。糸球体濾過量(GFR)と血清クレアチン値を考慮して、利尿剤を使い分ける(ループ、サイアザイド、カリウム保持)必要がある。
・高血圧になると腎障害及び心血管障害の原因になるため、蛋白尿と微量アルブミンの測定は必須項目である。腎臓を守ることが生命を守ることである。
・家庭血圧における収縮期血圧が140mmHg以上は許されない血圧であり、早期に治療することが重要である。