薬剤師修行ファイルNo.080216:米国医療保険制度と薬剤師

2008年2月研修記録
★米国の医療保険の特徴
公的医療保険制度があるのは、連邦政府が運営する高齢者向け医療保険(メディケア:約4,239万人が加入)及び州政府が運営する低所得者向け医療保険(メディケイド:約5,630万人が加入)のみで、民間保険(約1億7,487万人)が主流であり、無保険者が多い(約4,660万人)。従って、国民の健康意識が高い。
★メディケア(高齢者医療保険制度)
・オリジナルメディケアプラン(連邦政府が保険者→最大の加入者を抱えている。)
 パートA(入院サービスなどを保障する強制加入):病院保険又は入院保険(65歳以上の高齢者は自動的に被保険者となる。腎臓移植、末期腎臓病患者は、年齢に無関係。) ・入院医療サービス ・高度看護施設サービス ・在宅医療サービス ・ホスピスケア ・血液Blood
 パートB:補足的医療保険(任意の保険)、パートAに登録されており、一定の保険料を払えば被保険者となる(月額:$93.50)。 ・医師等による医療サービス ・病院外来サービス ・臨床検査サービス ・在宅医療サービス ・予防医療サービス
・メディケア・アドバンテージ・プラン(メディケアから毎月被保険者1人当たり一定金額を受け取り、加入者にサービスを提供)
 メディケアHMO・プラン
  受診できるのは契約している医師・病院に限られる。
  加入時にPCPに登録。専門医の受診には、紹介状が必要となる。
・メディケアPPO・プラン
  プランのネットワークを利用した場合は、償還率が低く、自己負担が増える。
・メディケア・民間出来高払い・プラン
 民間保険会社の提供する出来高払いプラン。パートB保険料に加え、サービスごとに保険会社の設定する自己負担額を支払う。このプランを受け入れる医師・病院ならどこでも受診可能。
・メディケア・スペシャルニーズ・プラン
 特定の疾病や状態にある人々を対象。
・メディケア・ドラッグ・プラン(追加料金を支払うことにより、薬剤給付を受け取る。)
 オリジナル・メディケア・プランには、外来医薬品に対する公的補助・給付は存在しなかったが、2006年から外来薬剤給付が創設された。標準的な保険プランは、月額35ドル。低所得者に対しては、給付、保険料ともに負担額の措置が講じられている。
★メディケイド(高齢者医療保険制度)
 連邦政府ガイドラインに基づいて各州が独自に運営。受給資格、給付タイプ、範囲、給付額は、州によって異なる。基本的に低所得者の子供がいる世帯や障害者に対する医療保障。高齢者や障害者への介護、低所得のメディケア加入者への補助。
★民間医療保険の現状
 企業が福利厚生の一部として提供するが、従業員15名以下の企業は、従業員に対して医療保険を提供する義務なし。保険料負担を軽減するため、従業員に費用を移転することになった。 → マネジドケア:医療内容に医師以外の第三者(保険者)が介入し、医療サービスについて何らかの管理・制限をする。財政リスクを医療提供者と共有する。コスト抑制のインセンティブを高め、効率的な医療を提供する仕組み
★民間保険HMO(Health Maintenance Organization)
 プライマリ・ケア医および 専門医・病院は、HMOネットワークに所属する。加入者は、ネットワークに加入した医師および医療機関のみ利用できる。専門医の受診および病院への入院は、プライマリ・ケア医を通じて行われる。予防給付の実施。
★民間保険POS(Point of Service Plan)
 POSネットワークに所属しているプライマリ・ケア医および専門医・病院はHMOと同様に低額な負担で利用できる。ネットワーク外の医師や医療機関の利用も可能であるが、自己負担が増える。ネットワーク内の医師および病院ではHMOと同様に予防給付を実施。
★民間保険PPO(Preferred Provider Organization)
 HMOやPOSのようなアクセス制限なし。PPOのネットワーク以外の医療機関を利用した場合は、自己負担が増える。ネットワーク内医師および病院で予防給付が受けられることが多い。

米国の薬剤師は、社会的信頼性が非常に高い職種として国民に認識されている。
★薬剤師になるには
 2003年以降は、薬学博士以外の課程では認定しない。薬大で少なくとも6年間(4年間+実習1000~2000時間)の教育が必要。州政府により認可され、薬学部の専門課程を修了した証明書を有し、州政府の薬剤師資格試験に合格者したもの。
★薬剤師の需要と職場(米国薬剤師の平均年収は、1,100万円以上。)
 60% 地域薬局、29% 病院薬局または施設(24% 病院、4% 長期療養所、2.4% 在宅看護)、1% 製薬会社/卸企業(推定)、1% 教師/行政機関、4% その他 <薬局の形態>調剤薬局(独立系個人薬局)ドラックストア(チェーン薬局)、メールオーダー薬局、インターネット薬局、調合薬局、非公開薬局
★調剤薬局における各スタッフの役割
 事務員(Pharmacy Aid):電話対応、レジ、接客、商品陳列など薬剤業務以外の作業
 ファーマシーテクニシャン(Pharmacy Technician):事務業務および調剤業務(要資格)
 薬剤師(Pharmacist):監査、服薬指導、保険請求、ジェネリックへの切替、電話処方対応
★薬局薬剤師の業務
 処方せん:リフィル(一度医師が出した処方せんが、くり返して使える制度)、電話処方、インフルエンザの予防接種、血糖値のスクリーニング(血糖値測定)、骨粗鬆症のスクリーニング、禁煙に対する患者支援、緊急避妊薬の処方、患者教育など