薬剤師修行ファイルNo.080112:調剤事故防止研修会

2008年1月研修記録
★ヒューマンエラー対策セミナー【ANAラーニング株式会社より】
・ヒューマンエラーをゼロにすることはできないが、事故・不具合を防止することは可能である。「誰の責任か」ではなく「誰が予防をできたか」である。→ 褒めることが大切である。
・ヒューマンエラー対策の基本的な考え方 : 人間の情報メカニズムは、無意識に「エラー」をする。
・バイオレーション(規則違反) : 1.作業基準や各種ルールを何気なく無視する習慣的行動が、エラーになる要因を作りだしている。 2.一面エラー無しで仕事が行われていても、何かのエラーと要因が組み合わさった場合は、高い確率で作業品質の不良に至る可能性がある。
・規則違反の特徴:1.規則違反は人(あなた)の「意思」によって行われる。 2.規則違反には、必ず「動機」がある。 3.規則違反者は必ず「目的」を持っている。 4.規則違反は一回限りというケースは、ほとんどない。(繰り返す。) 5.規則違反を許す企業風土や職場環境がある。 6.規則違反の可能性と人の属性との相関関係は明確ではない。 7.規則違反の罪悪感を和らげる要因があると実行に繋がりやすい。 8.規則違反が常態化するとその行為自体がグループ内で正当化される傾向がある。
・規則違反に陥らないためには、一人一人が規則違反を導きやすい状況・環境要因を減らす行動をする。
・事故は、エラーチェーンを構成する。事故が起きる前にチェーンを切る。(事故防止) → 努力して原因を探し、手当・対策を講じる。
・エラー防止法 : 【仕事中にエラーに気づく法】 ■自分で気づく(個人)、■仲間が気づく(チーム) → メモをとる。指差呼称する。 【仕組みの変更】S:基準・手順書の変更、H:工具・道具の改良、E:環境の改善、L:能力の向上・健康 → 質問できる環境をつくる。皆で考え、リーダーがまとめる。自らが進んでやることが大切である。
・エラー防止を図るための努力 : 【中心のL】訓練・自己啓発などで能力の向上、健康維持・改善提案 【LとL】チーム・マネージメント能力の向上 【外側の要因】改善・マネージメントなどにより「中心のL」にエラーを発生させない。
・安全の創生=個人×チーム×組織 (医師×看護師×薬剤師)

★調剤事故防止のための行政・企業の対応策【日本薬剤師会より】
・医薬品をめぐる事故には、1.医薬品そのものに起因するもの(物の安全、薬害肝炎など) 2.人間に起因(ヒューマンエラー:使用の安全)→ 医療従事者の資質、医薬品を取り巻く環境など( 医薬品の名前、容器・包装、法・制度など)
・オーダリングシステムによる医薬品誤選択事故 : アルサルミン(消化性潰瘍治療薬) → アルケラン(抗骨髄腫剤)、サクシゾン(ステロイド剤) → サクシン(筋弛緩剤)、エンピナース(抗炎症剤) → エンドキサン(抗悪性腫瘍剤)、ワイパックス(精神安定剤) → ワーファリン(血液凝固阻止剤)、タキソテール(抗悪性腫瘍剤) → タキソール(抗悪性腫瘍剤)、ノルバスク(降圧剤) → ノルバディックス(乳癌治療剤)など。 情報システムの発展により、利便性が考慮され先頭から1文字、2文字でも自由に候補薬品名が検索できるようになったため。
・散剤は、調剤事故が発生しやすいので、特に注意が必要である。 散剤の充填ミスによる投薬事故 : セルテクトの充填瓶にセレネースを誤って充填した。 散剤の規格違いによる誤投薬事故 : ネオフィリンの1%散(院内製剤)を出すつもりで原末を調剤した。 ジゴシンの0.01%(院内製剤)を出すつもりで0.1%散(市販品)を調剤した。
・情報伝達エラー(口頭指示の転記エラー) : インシュリン4単位のつもりが4mL(1単位=0.01mL)、インシュリン半筒(ハントウ)のつもりが3筒(サントウ)に。
・医療安全に関する行政の取組み : 「医療安全対策検討WG」で検討されたことが「医療安全対策検討会議」にかけられ、「社会保障審議会 医療部会」で議論された後、医療法改正となる。「医療安全対策検討ワーキンググループ」の「報告書」を閲覧すればどんなことが、検討されていたかが分かる。
・平成20年9月出荷分から全ての注射薬にバーコードが付与される。ロット、期限(特性は必須、その他は任意)がバーコードで読み取られる。
・医薬品や医療機器などを安全に使用するための情報を提供するホームページ医療事故情報収集のホームページなど、ヒヤリハット事例の共有化が重要である。
・まとめ : 我が国は、医薬品の「安全の使用」確保について行政等が積極的に真剣に取り組んでいる。残念ながら製薬企業は未だに医療安全対策検討会議の提言への反応が鈍い。「使用の安全」については、先発品・後発品の差はない。他人のところで起きた事は、自分のところでも起きると思って対策を!