薬剤師修行ファイルNo.070225:脳梗塞

2007年2月研修記録
【サノフィ・アベンティス株式会社より】
★はじめに
・脳疾患の内訳 : 脳出血は減少しているが、脳梗塞は増えている。日本人は、欧米人に比べ「心筋梗塞」より「脳梗塞」が多い。
・脳梗塞の種類 : 心原性脳梗塞,アテローム血栓性脳梗塞ラクナ脳梗塞
2002年の調査では、3種類の脳梗塞の発症の割合は同じくらいである。(昔は、ラクナ脳梗塞が多かったが、食の欧米化に伴いアテローム血栓性・心原性脳梗塞が増加)
★脳梗塞の症状
・顔 面、腕、手足の突然の「脱力感」や麻痺あるいは「しびれ」 ・発語困難、会話やことばの理解が困難 ・意識消失 ・突然の視力消失(特に片側の目のみに発生する) ・めまい、平衡感覚の喪失 ・呂律緩慢 ・認知障害、性格変化
★急性期の治療ガイドライン
血栓溶解療法 tPAアルテプラーゼ:2005年10月に保険適用 (静脈内投与)
専門医師が適切な設備を有する施設で、適応基準(脳梗塞発症3 時間以内、CTで早期虚血所見がないかまたは軽微、など)を十分に満たす場合については、脳梗塞急性期の治療法として有効性が期待される(グレードA)。
実績:1年間に約3200人に使用、1年間で48人が副作用で死亡。(死亡の内訳:脳出血29人,使用基準を満たしていなかった5人)
★抗血小板療法 脳梗塞急性期
1.オザグレルナトリウム160mg/日の点滴投与は、急性期(発症5日以内)の脳血栓症(心原性脳塞栓症を除く脳梗塞)患者の治療法として推奨される(グレードB)。 【日本のみ】
2.アスピリン160~300mg/日の経口投与は、発症早期(48時間以内)の脳梗塞患者の治療法として推奨される(グレードA)。
★脳梗塞慢性期の治療方法
・降圧目標:一次目標(治療開始数ヶ月)150/95未満、最終目標(それ以降)140/90未満
脂質管理目標:TC <200 mg/dL,LDL値<120 mg/dL,HDL値³ 40 mg/dL,TG:<150 mg/dL
 EPA(エパデール)1800mg/日を摂った人は、心血管イベントを発症する割合が20%減る。
 「スタチン+EPA」の服用で「脳卒中既往患者」の再発は20%減少。
 2型糖尿病患者でアクトスを服用している脳卒中既往患者の再発は47%減少。
・脳代謝改善薬、脳循環改善薬
脳梗塞後遺症の軽減に頻用された脳循環代謝改善薬は、再評価により適応薬剤が大幅に減少し、また適応症も一部変更となった。(グレードB)。 イブジラスト(ケタス): 脳梗塞後の広義のめまいに対して有効,ニセルゴリン(サアミオン):一般の認知障害,酒石酸イフェンプロジル(セロクラール):脳梗塞後のめまいに対してそれぞれ有効である。
・再発予防のための抗凝固療法
弁膜症を伴わない心房細動(NVAF)のある脳梗塞または一過性脳虚血発作(TIA)の再発予防では、ワルファリンが第1選択薬である。INR 2.0~3.0が推奨される(グレードA)。 ただし、食事制限を受ける。
・再発予防のための抗血小板療法
「非心原性脳梗塞」の再発予防上、最も有効な抗血小板療法はアスピリン75-150mg/日(A) 、チクロピジン200mg /日(A) 、シロスタゾール200mg /日(B) である。 ラクナ梗塞の二次予防にも抗血小板薬の使用が奨められる(B) 。ただし十分な血圧コントロールを行う必要がある。
・再発予防のための抗血小板療法
心原性脳塞栓症の再発予防は、抗凝固薬ワルファリンが第1選択薬であり(グレードA)、ワルファリン禁忌の患者のみアスピリンなどの抗血小板薬を投与する(グレードB)。
・抗血小板薬の種類
COX阻害薬:アスピリン 、ADP(アデノシン二リン酸)受容体阻害薬:チクロピジン,ブラビックス(クロピドグレル)、ホスホジエステラーゼ阻害薬:シロスタゾール,ジピリダモール
ブラビックスとチクロピジンの再発予防効果は、アスピリンより優れている。ブラビックスは、チクロピジンより副作用が少ない。特に血管障害、肝機能障害は有意である。
★血小板凝集抑制薬が問題となるような手術
循環器疾患における抗凝固・抗血小板薬療法のガイドライン観血的処置【日本循環器学会等】
1)抜歯は、抗血小板薬の内服継続下での施行が望ましい。
2)体表の小手術で出血性合併症が起こった場合の対処が困難な場合、ペースメーカーの植え込み、および内視鏡による生検や切除術等などへの対処は大手術に準じる。
3)大手術の場合、アスピリンは7日前に、チクロピジンは手術の10~14日前に中止する。シロスタゾールは3日前に中止する。その間の血栓症や塞栓症にリスクが高い症例では、脱水の回避、輸液、ヘパリンの投与などを考慮する。
4)緊急手術時の対処は、出血性合併症時の対処に準じる。
抗血小板薬の休薬期間(内視鏡治療時)
アスピリン 3日休薬,チクロピジン 5日休薬,アスピリン+チクロピジン 7日休薬