薬剤師修行ファイルNo.071021:パキシル、うつ病

2007年10月修行記録
★パキシル及びリレンザの製品紹介【グラクソ・スミスクライン㈱より】
・パキシルは販売して、7年が経過しており、高い評価を得ている。抗うつ剤市場で第1位に躍進しており、SAD(社会不安障害)の申請をしている。
・タミフルは、10代での使用制限やB型インフルエンザに対して耐性化があり、効果が低下していると言われている。リレンザは、B型インフルエンザの耐性化がない。昨年のインフルエンザの患者数である130万人分のリレンザを用意している。

★うつ病について
・うつ状態とうつ病は異なっており、うつ状態とは情動の変化を示す言葉。生きている人間には必ず生じる心理的生体反応で自然なものから異常まで幅をもつ。また、うつ病とはうつ状態を中核とする正常状態には現れない了解不能な病の状態である。
・うつ病の精神症状には焦燥型(イライラ、不安)と抑制型(メランコリー型:もの悲しい、精神運動抑制型:意欲低下)がある。自殺が多いのは抑制型である。
・うつ病の身体症状の大部分は、睡眠障害と食欲不振がある。その他には嘔吐、頭痛、めまい、痛み、動悸、肩こり、下痢などがある。
・日本で市販されているSSRIにはパキシル、デプロメール(ルボックス)及びジェイゾロフトの3品目がある。効果発現する用量は、デプロメール(ルボックス)で1日200mg~300mg(添付文書での用量は1日150mgまで)、ジェイゾロフトで1日100mg以上(添付文書では1日100mgを超えない)であり、用量は少ない。パキシルだけが添付文書の用量と効果発現が合っているのが現状である。SNRIのトレドミンも日本での用量は少なく設定されているため、効果発現が弱い。また、SSRIとSNRIを比較すると、SSRIの効果発現には6週間必要であるが、SNRIの効果発現は4週間であり、SNRIの方が効果は早いようである。
・先日のマスコミ報道において、横綱朝青龍は現時点でうつ状態であるが、3~4日後にうつ病になる可能性があると精神科医の言葉があった。諸般の事情があると思われるが、朝青龍は協会から怒られてふてくされているだけでうつ病にはならない。
・ZARDの坂井泉水さんが死亡(子宮がんで肺に転移し、自殺と思われる)されたが、女性特有の子宮がんや女性に多い乳がんが発症した場合、女性はうつ病にかかりやすくなる。

<Q1>リタリンはうつ病の適用が削除になったが、うつ病で使用したことがありますか?
<A1>ナルコレプシーで1例(患者は医師)使用したが、うつ病で使用したことは過去に一度もない。リタリンは覚せい剤で乱用が心配であり、他にうつ治療剤は多数ある。賢明な判断と思われる。
<Q2>パキシルからトレドミンに変更になった患者の話で、医師は更に意欲を高める必要があるため、変更したと説明されたが、実際にそういうことがありますか?
<A2>話半分に聞いておく方が良い。意欲を高める効果は、パキシルとトレドミンは同等と思われる。
<Q3>精神科(うつ病)の診断はどういう方法でされていますか?
<A3>うつ病の診断には手順書があり、どこの精神科に受診されても同じ方法で診断されている。医師の個人差はあるが、行き当たりばったりで診断はしていない。
<Q4>抗うつ剤の減量・中止はどのタイミングで実施されていますか?
<A4>うつ病は再発率が高いため、抗うつ剤で効果があると減量しないのが鉄則である。少なくとも6ヶ月~1年は継続使用が望ましい。減量は患者とよく相談して決めている。また、患者の調子が良い場合、患者自身の判断で減量(分3→分2で昼は服用していない)している。
<Q5>うつ病患者に対して、周りの人はどういう態度で接するのが良いですか。「がんばって下さい」とか励ましの言葉は禁句と言われていますが?
<A5>急性期には「がんばってください」は良くないが、回復期には問題ない。基本的には心配してあげることと近くにいつも付いていることが大事である。