2007年12月研修記録
★関節リウマチ治療の現状と将来~ 内科の立場から ~
・関節リウマチにおける薬物療法の一般目標は、炎症の抑制と沈静化、疼痛とこわばりの軽減、関節破壊の防止等である。
・関節リウマチの骨破壊は、発症2年以内に生じることが多く、早期に有効な抗リウマチ剤(DMARDs)などの薬物治療を積極的に行う必要がある。(75%が発症1年以内に骨びらんの所見を示しており、治療ガイドラインでは、3ヶ月までに治療を開始することとなっている。)
・疼痛の緩和に用いる薬剤は、非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs)とステロイド薬である。NSAIDsの副作用で多いのは、消化性潰瘍である。坐薬を用いても潰瘍は起こる。潰瘍予防効果のエビデンスがある胃薬は、H2ブロッカー(高用量のみ)、ミソプロストール、PPI(保険適応なし)である。潰瘍の副作用が少ないNSAIDsは、COX-2阻害薬(モービック、ハイペン、セレコックス等)であり、その中で鎮痛効果が高いのは、セレコックスである。
ステロイド薬は、炎症を迅速かつ強力に抑制する(疼痛緩和が強い)。副作用は、骨粗鬆症、感染症、糖尿病、脂質異常症などがある。関節リウマチそのものが骨を破壊するので、ビスホスホネート系薬剤の投与が必要である。その他の副作用についても早期診断・治療が必要である。ステロイド薬投与患者には、勝手に服用中止をさせないように指導する。急に中止するとリバウンドして症状が悪化する。用量を減らす場合は、ゆっくりと時間を(半年~1年)かけて減らすことが大切である。
・関節変形を止めるには、DMARDs、免疫抑制剤(タクロリムス)、生物学的製剤を使用する。リウマチ学会のアンケートで有効なDMARDsとしては、メトトレキサート、ブシラミン、サラゾスルファピリジンの回答が多かった。DMARDsの特徴としては、遅効性であるが、効果を発揮すると持続は長い、2年経過すると殆どのDMARDsでエスケープ現象が起こる。メトトレキサートは、エスケープ現象が一番低く2年後で5割をキープしている。DMARDsは、しばしば重篤な副作用(間質性肺炎等)がみられるため、少量から始めるのが原則である。演者は、メトトレキサート(葉酸代謝拮抗剤)を服用させる全て患者に、副作用防止のために葉酸5mgを24時間後あるいは48時間後に服用させる。薬効には、殆ど差がでないとのこと。
・生物学的製剤(TNFα阻害剤)は、関節破壊の抑制効果が高く、破壊された関節が修復されるケースもある。インフリキシマブは、メトトレキサートと併用で治療(保険適用上必須)することで相乗効果が得られる。エタネルセプトは、自己注射(皮下注射)であり、保険適用上メトトレキサートとの併用は必要ないが、併用したほうが効果は高くなる。副作用として感染症に注意する。レントゲンやCTのチェックが必要であり、結核予防にはイソニアジドを投与する。
★関節リウマチ治療の現状と将来~ 外科の立場から ~
・整形外科におけるリウマチ診療のキーポイントは、① 早めの診断と評価、② 関節リウマチの予防効果のエビデンスのある抗リウマチ薬をできるだけ早く投与する、③ 薬剤抵抗性の関節には滑膜切除術を行うこと、④ 破壊と機能障害の強い関節には人工関節置換術などの機能再建術を行う。
・関節リウマチは、病初期から関節近傍で骨粗鬆症を生じる疾患であり、治療薬の一つであるステロイド薬によっても骨粗鬆症が増悪しやすい疾患なので、全身の骨密度を維持するような予防策が求められる。骨粗鬆症は、寝たきりの原因疾患の一つであり、治療薬は、骨吸収抑制製剤をメインに使用する。
・早期治療の重要性:初期は滑膜炎の痛みで可逆的であるが、末期は関節破壊の痛みであり不可逆的である。
・骨破壊は、「炎症の強さ」×「時間」である。CRP値(C反応性蛋白)は、炎症を反映する。
・関節再建方法:まず痛みをとることが先決(滑膜切除術)、 可動域を犠牲にしても支持性を獲得する(関節固定術)、 支持性を犠牲にしても可動域を獲得する。(上肢の人工関節置換術)、 支持性と可動域を両方獲得する。(下肢人工関節)
求められる機能は、関節それぞれによって異なるため、関節に応じた機能再建手術が必要となる。
・人工膝関節全置換術(TKA):傷んだ軟骨と骨を削って人工物(金属とポリエチレン)に置き換える。ポリエチレンは、磨耗するので入れ替え手術が必要、技術的な進歩に伴い、入れ替え手術は容易になった。