薬剤師修行ファイルNo.071110:骨粗鬆症

2007年11月修行記録
★エビスタの情報提供【中外製薬㈱より】
エビスタは、骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2006年版において、骨粗鬆症治療薬の推奨度で総合評価として、アンドロネートとリセドロネートと並んでAランク(A;強く勧められる、B;勧められる、C;勧められるだけの根拠が明確でない、D;勧められない)である。
・エビスタは骨量増加ではなく、骨質を改善させることで骨折を防止する効果がある。骨質には骨微細構造、骨石灰化、コラーゲン架橋、骨代謝などがあるが、エビスタはコラーゲン架橋を増加させる。

★最近の骨粗鬆症治療戦略と治療薬の使い分け
・50歳以上の女性の有病率が24%との結果が出ており、日本の骨粗鬆症患者は推計で780万人~1100万人という数字が出されている。今後、高齢化率の増加に従い、骨粗鬆症患者の罹病率も急速に増加する。しかし、受診率はかなり低いのも現状である。
・骨粗鬆症の定義は骨量減少と骨組織の微細構造の変化を特徴とする全身的疾患であり、このため骨が脆弱化し、骨折をきたしやすくなった病態である。骨密度と骨質を合わせた骨強度が重要になる。
・骨は2つの異なった材質からできており、建築用語でいえば、混合材と考えられる。鉄筋コンクリートによくたとえられるが、鉄筋に相当するものが骨の中にあるマトリックスで、コンクリートに相当するものがミネラルである。この2つが劣化すると骨折に結び付きやすくなるという意味で、骨の材料の質が問われる。骨粗鬆症に伴う骨折の約70%が骨密度で説明し、残りの約30%が骨質で説明できる。
・ビスフォスフォネートは、特に高回転型の骨粗鬆症に対して、強力に骨吸収を抑制することにより骨代謝回転を低下させ、骨量増加、骨折防止効果を発揮する。アレンドロネート及びリセドロネートは、現在最も強いエビデンスに支えられた薬剤である。最近、1週間製剤が上市され服用の負担は軽減されているが、修行僧(服用後30分間、横になれない)のような飲み方が必要である。
・ビスフォスフォネートは、低回転型の骨粗鬆症に対して、更に骨代謝回転を低下させると、顎骨壊死の副作用の可能性がある。なお、日本は海外と比較して、低用量のため、顎骨壊死の副作用報告はない。歯科又は口腔の外科的治療を実施する場合、治療の前後2ケ月は休薬した方が良いと言われている。
・エビスタは非椎体骨折防止効果のエビデンスは十分にないものの、椎体骨折に関してはビスフォスフォネートに勝るとも劣らない。しかも、骨吸収抑制効果のメカニズムはビスフォスフォネートとは異なり、過度な骨吸収抑制をしないで、骨のリモデリングは未閉経レベルに保たれることから、健常性がより高いと考えられている。
・エビスタは未閉経者には、本来の骨代謝作用が発揮されない可能性があることから禁忌となっている。また、閉経者でも hot flush (のぼせ、ほてり)や下肢痙攣のある例では、エビスタはこれらの諸症状を増悪させる可能性があるため、差し控えた方が無難である。さもなければ、これらの症状に対して漢方療法にて抑制しつつ、エビスタを使用するという方法もある。
・活性型ビタミンD3製剤は骨の石灰化を惹起し、架橋形成を正常化することで正常な骨の形成に役立つ。また、筋肉増強作用があり、転倒防止効果がある