薬剤師修行ファイルNo.070623:C型肝炎

2007年6月研修記録
★新しい治療薬の確立: C型慢性肝炎:ペガシス(PEGINF)とコペガス(リバビリン)【中外製薬㈱より】
ぺガシスは、既存のrIFNα-2aにポリエチレングリコール(PEG)を2分子結合させたもので分子量40キロダルトンを有する。ペグイントロンは、PEGを1分子結合したもので分子量も半分である。ペガシスの特徴としては、効果が持続するため投与間隔(1~2週間)が長いため患者の通院の負担が少なくてすむ。ペグイントロンは、即効性であるが、副作用の頻度も高く用量調節を細かく行う必要があるが、ペガシスの用量調節は2種類(90と180μg)で行われ、副作用が発現した場合は投与間隔を延長して調整する。
・ペグインターフェロンの単独投与で効果がない場合、コペガスが経口投与される。コペガスは、レベトールと同じ有効成分(リバリン)であるが、レベトールのカプセル剤と比較して服用しやすい錠剤となっている。基本的には、ペガシス-コペガスとペグイントロン-レベトールの組み合わせになる。

★肝がん撲滅を目指して: C型慢性肝炎:病態・診断・治療の最前線
・ペグインターフェロンとリバリンの治療法が保険適用になり、難治のC型肝炎タイプ(日本人の6割)の陰性化率も20%から50%-60%に引き上げられた。一度インターフェロン治療を受けて陰性化できなかった事例でも陰性化率50%前後まで治療できるようになった。ここ数年は、この治療法が定着すると考えられる。現在、C型肝炎の患者の8割が陰性化できるようになった。
・C型肝炎の8割は活動型で、ほっておけば肝硬変になり、数年後には肝がんに移行する。早めに治療することで、ウイルスの陰性化は容易になる。
・本治療で陰性化できない場合は、肝庇護療法が行われる。強力ミノファーゲン(グリチルリチン製剤)、少量インターフェロン、ウルソ、瀉血など、ALT(GPT)を30IU/Lまで下げる治療がなされる。
瀉血療法とは、C型肝炎では、肝臓に蓄積された鉄分により活性酸素が発生し、肝炎症状の悪化を招く。このため肝臓に蓄積された鉄分を減らすために通常は鉄分を含む食品を取らないようにして症状の悪化を食い止めるが、既に鉄分が過剰に蓄積されている状態では、通常の新陳代謝ではなかなか状態が改善しない事がある。このため、瀉血によりヘモグロビンの形で多量の鉄を内部にもつ赤血球を体外に排出させ、体内の鉄の総量を減少させる治療が行われる。
・演者が所属する病院で、ペガシス-コペガスの治療患者は、現在4,5例と少ないが陰性化の方向に向かっている。今後、治療対象の患者を増やす予定である。
・C型肝炎の患者には、シジミ、レバーなど鉄分の多い食事を摂らないようにアドバイスして欲しい。肝臓に鉄分が沈着してかえって肝炎が悪化する。(肝臓に酸化ストレスを与える。)
・ペグインターフェロンーリバリン治療の注意して欲しい副作用 : 貧血、間質性肺炎、うつ病、脳出血など。 貧血、うつ症状が起きた場合は、投与量を減じる(PEGINFは7割まで、リバリンは5割まで)。間質性肺炎、脳出血を起こした場合は、治療を中止する。