薬剤師修行ファイルNo.071018:気管支喘息治療

2007年10月研修記録
★高齢者喘息治療の実際
・喘息死は年々減少しており、最新のデータによると、2005年度で約3198人、2006年度で2718人である。3000人以下になっているが、海外と比較すると日本の喘息死は多いのが現状である。喘息死の大部分が60歳以上の高齢者である。
・小児喘息はアトピー型(遺伝的素因に基づいて生まれつきの過敏症体質があり、即時型アレルギー反応)が多いが、高齢者は非アトピー型(感染性)が多いのが特徴である。非アトピー型の病態生理は十分に解明されていないが、呼吸器でのウイルス感染が考えられている。
・高齢者喘息患者に吸入ステロイドが使用されているが、十分理解して、使用されていないのが現状である。医師の指示通り使用されている患者は、約60%しかないのが現状であり、吸入指導(医師よりも薬剤師及び看護師の方が理解しやすいようである)が重要である。高齢者に毎日吸入ステロイドを使用するように指導しても、症状が悪い時にしか使用しない場合がある。
・パルミコートは赤い印が小窓の下まできている(薬の残量がない)にもかかわらず使用している場合がある。パルミコートの欠点として、「吸った感じがしない吸入器」との印象があるためである。
・フルタイド・ディスカスはフルタイド・ロタディスクと比べて添加されている乳糖の量が半分になっているため、吸入量が少なく、ディスクヘラーで吸入することに慣れてきた患者は「吸った感じがしない。本当に薬が入っているのだろうか」という感じがあり、カバーを開けて、レバーを押さず(レバーを押さないと薬は出ない)に吸入している場合がある。また、フルタイドは、現在市販されている吸入ステロイド剤の中ではもっとも強力な効果をもっているため、「喉かれ」などの副作用が多い。
・高齢者には自己吸気が衰えている場合があり、エアゾールタイプの方が適していると言われているが、コンプライアンスに関してはエアゾールタイプとドライパウダー吸入器との差はないと思われる。
・高齢者喘息患者の治療薬を調査した結果、テオフィリン製剤や抗ロイコトリエン製剤の使用頻度が高く(約70%)、吸入ステロイド使用は上昇しているが、使用頻度が少ない(約20%)のが現状である。その理由として、コンプライアンスの問題があり、内服薬のコンプライアンスは良好であるが、吸入薬のコンプライアンスは不良のためである。なお、ホクナリンテープの塗布剤は、コンプライアンス良好である。

★咳喘息の病態、診断、治療 UP to Date
咳喘息は、新しい概念である。①乾性咳嗽が8週間以上継続する。②喘鳴、安静時呼吸困難などの喘息の既往がない。③乾性咳嗽は夜間が多い。④好酸球、血清IgEが高値。⑤気管過敏症がある。⑥アトピー性疾患又は家族歴がある。⑦気管支拡張薬がよく効く。⑧胸部X線で異常を認めない。これらが特徴である。しかし、慢性乾性咳嗽の疾患として、アトピー咳嗽、後鼻漏による咳嗽、胃食道逆流による咳嗽、ACE阻害薬による咳嗽があり、咳喘息と区別して診断することが重要である。咳喘息と診断するポイントは①と⑦である。
・最近、咳喘息が増加しており、症状は風邪の後に2~3週間咳が続き、ぜーぜー感や呼吸困難はない。主症状は咳のみである。また、咳喘息は喘息の亜型又は前段階と考えられており、喘息に移行(約30%が喘息に移行する)させないように治療する必要がある。
・咳喘息の治療薬は気管支拡張薬、抗アレルギ-薬及び吸入ステロイド薬があるが、確実に効果があるのが吸入ステロイドである。吸入ステロイドを使用する際、良くなればすくにやめるのではなく、数ケ月は続けることが大事である。