薬剤師修行ファイルNo.071208:冠動脈疾患

2007年12月研修記録
★心臓選択性β遮断薬「テノーミン錠」とストロングスタチンの「クレストール錠」について【アストラゼネカ㈱より】
・高コレステロール血症、高血圧と「心拍数」は相関があり、過度に心拍数が高い症例では、テノーミン錠は優れた効果を示す薬剤である。アムロジピンとテノーミン錠の併用により24時間にわたる血圧コントロールが可能である。
・クレストール錠は、糖尿病などを有する高リスク群Ⅲ(LDL<120mg/dL以下で管理)の患者において、80%以上が管理目標値に達した。また、日本人においても肝臓・腎臓に対して安全で、新たな重大な副作用は認めなかった。

★冠動脈疾患に対する治療戦略
・急性冠動脈症候群が増えている。心電図でST上昇が明らかな心筋梗塞は、診断が容易で直ぐに対処できるが、不安定狭心症や非ST上昇の心筋梗塞は、容易に診断がつかないので対応が難しい。
・昔は、CPKが正常値の2倍以上あれば、心筋梗塞の可能性を疑っていたが、現在は「トロポニンT」が陽性になると心筋梗塞と診断している。「トロポニンT」迅速検査キットは、検査時間が短いた早期の診断に有効であり(4時間は陰性であり6時間は必要、ラピチェックは、2~3時間で陽性になる。)、非ST上昇例でも陽性となる。陽性を示すと即入院してもらう、陰性の場合は後日診断する。
・コンピュータによる心電図の解析は間違いが多い。正常は正しいが、異常は40%が間違っている。
・狭心症の胸痛は数秒~数分の断続的な痛みであり、心筋梗塞の胸痛は数十分間以上持続する痛みである。
・詰まった冠動脈血管は、カテーテルなどを用いる経皮的冠動脈拡張術を行うが、40%が再発する。 また、従来のステント留置術は、再発が20%であったが、現在は薬剤溶出性ステント(DES)を使用する。再発率は0.2%と低い。演者が勤務している病院では再発例を認めていない。半年後に再検査をして詰まっていなかったら以後は狭搾しにくい。学会では、ステントを入れた場合、一生血流を良くする薬剤(アスピリン、パナルジン、プレタール、ブラビックスなど)を飲み続けることが推奨されている。
・冠動脈疾患の予防: ①規則正しい生活をする。 ②アルコールはほどほどに、 ③ストレスをためないように、 ④ お風呂はぬるめでゆっくり。 ⑤タバコは控えめに(血管を縮めるため発作が起こる。患者はタバコの煙に近づかないように注意する。) 等
・冠動脈疾患患者の血圧は、厳重に管理する。(24時間にわたる血圧をコントロールが必要。) 降圧剤としては、Ca拮抗剤、RA系抑制薬、利尿剤などを用いる。「VALUE」と「CASE-J」の大規模スタディーにおいて、Ca拮抗剤とARBの効果の比較では、初期の降圧効果には、Ca拮抗剤が有効であり、ARBの効果は3年以上長期に投与することでCa拮抗剤に勝る。ABRは、長期に使用することで臓器保護効果が高く、肥満患者のリスクを低減する。インスリン抵抗性を改善して(インスリンの感受性を高める)糖尿病の発生を抑制する。腎臓機能の悪化を下げるため、クレアチニンが高くてもABR投与を早期から投与する。
・「運動能力」=「心臓」×「下肢筋力」の関係にあり、よっぽど重症でないかぎり、運動は継続することが大切である。ストレッチなどの有酸素運動も有効である。これを行うことにより、HDLコレステロールは上昇し、心拍数、収縮期血圧、血中乳酸、血中カテコールアミンレベル、血中中性脂肪、皮下脂肪は下げる。
・患者に食事管理は、難しい。塩分制限を指導するが、退院して病院食から家庭食にかわると家族と同じものを食べるため、食塩が増し、おいしく感じて食べ過ぎて、退院後の患者の体重は増える。食塩を取ると血中のナトリウムが増加し、浸透圧が高くなることで血中の水分が増加し、血液の量が増えて血圧が上がってしまう。
・コレステロールは、二次予防では下げれば下げるほどよい(The low the better)、単にコレステロールが高いだけの人は、正常範囲まで下げればよい。
・スタチン系薬剤の強さは、クレストール、リバロ、リピトール、リポバス、ローコール、メバロチンの順に効果が高い印象がある。演者の勤務する病院のクレストールの実績は、TC:250mg/dL → 180~190mg/dL に、TG:170mg/dL → 120mg/dL に下がり、HDLは有意差を認めなかった。また、スタチン系薬剤を服用していた患者に対してクレストールに変更して投与するとLDL:120mg/dL → 90~100mg/dL まで下げ、HDLは上昇した。当院の実績でもクレストールは、効果の高い薬剤であった。