薬剤師修行ファイルNo.070701:がん治療

2007年7月1日研修記録
★がん治療と薬剤師
・平成16年度から厚生労働省が進めている「第3次対がん10か年総合戦略」において、全国どこでも質の高いがん医療を受けることができるよう、がん医療の「均てん化」が図られている。
・日本病院薬剤師会では、2年前からがん専門薬剤師の養成に力を入れている。昨年がん専門薬剤師の試験を行ったが、合格率は約50%であった。不合格の主な理由として、ペーパ試験の点数ではなく、認定申請資格が不十分であった。
・認定申請資格には8項目(薬剤師暦5年以上、認定薬剤師、学会の会員等)があるが、一番厳しい資格は全国レベルの学会において、がん領域に関する学会発表が3回以上(少なくとも1回は発表者であること)及び学術論文が2編以上(うち、1編は筆頭著者)必要である。
・最近、がん専門薬剤師はハードルが高いため、底辺拡大のため、がん認定薬剤師の資格を新たに設定しており、今後具現化していく。
・薬局薬剤師は、がん専門薬剤師の資格を取得するのはほとんど不可能と思われるが、がん認定薬剤師の資格を取得できる可能性はある。

★医師から薬剤師へのメッセージ
・日本において、1年間でがんによる死亡者数は32万6千人(死因の第一位で3人に1人はがんで亡くなる)に達しており、また、約60万人が毎年罹患しており、年々増加傾向である。しかし、欧米先進国において、がんの死亡率は減少傾向にある。
・第3次がん10ヶ年総合戦略が、今年4月から施行された。総合戦略はがん研究の推進、がん予防の推進及びがん医療の向上とそれを支える社会環境の整備の3本柱からなっている。
・がん対策において、重点的に取り組むべき課題として、放射線療法及び化学療法の推進並びにこれらを専門的に行う医師等の育成がある。放射線療法の専門医師が日本では少なく、がん患者のうち放射線治療を実施している患者数は、アメリカ66%、ドイツ60%、イギリス56%であるが、日本では25%しかない。これからのがん治療は手術ではなく、放射線療法が重要であると言われている。その他、治療の初期段階からの緩和ケアの実施及びがん登録の推進がある。
・平成16年から各都道府県でがん診療連携拠点病院制度が実施されており、京都府では京都府立医科大学附属病院ががん診療連携拠点病院になっている。
・医師から薬剤師に期待することは、病院薬剤師はチーム医療に積極的に参画していただき、もっと汗をかく必要がある。また、薬局薬剤師は「まちかど相談薬局」が機能していないように感じており、地域住民の健康増進に努力して欲しい。

★患者から薬剤師へのメッセージ
・COML(Consumer Organization for Medicine & Law)は1990年にスタートしており、「賢い患者になりましょう」を合言葉に、患者の主体的な医療への参加を呼びかけている市民中心のグループである。最終的な目的はより良い医療をつくることである。
・患者からの相談件数で最も多いのが、医師への苦情であり、以下、医師の説明不足、医師不信、医療費、法的解決や示談交渉、薬に関すること、育児相談、セカンドオピニオン、看護師への苦情、情報開示、院内感染、介護保険の順になっている。
・医療者に求められる資質は、①感性、②問題抽出能力、③問題解決能力、④コミュニケーション能力、⑤教育力の5項目である。また、印象の良い医療施設(病院、診療所、薬局等)は、①親切なもてなし、②わかりやすい説明、③話を聴いてくれたの3項目になっている。
・薬剤師は薬の専門家であり、薬物治療において、医師に遠慮することなく、仕事をしてもらいたい。ただし、専門家は責任を取ることである。