2007年12月研修記録
★エビスタ錠について【中外製薬株式会社より】
・エビスタ(塩酸ラロキシフェン)は、発売して3年が経過しているが売上げは伸びている。ビスフォスフォネート系薬剤の1週間1錠タイプが発売されたが予想以上に影響は受けなかった。薬価148.5円であり、ビスフォスフォネート系薬剤と同程度である。
・エビスタは、選択的エストロゲン受容体モジュレーターであり、閉経後の女性の骨粗鬆症に用いられる。
・エビスタは、① 骨に働き、骨折を抑制する。② 脂質代謝に働き、脂質を改善する。 ③ 子宮に対しては、子宮内膜の刺激を抑える。④ 乳房に対しては、乳がん予防に働く。
・「骨の強度」=「骨密度」+「骨の質」であり、ビスフォスフォネート系薬剤は、骨密度(骨量)を上げるが、エビスタは、骨代謝回転を閉経前にもどして「骨の質」を改善する。(両剤とも骨吸収を抑制することにより骨代謝回転を低下させて、骨折防止効果を発揮する。)
・エビスタを80歳以下の閉経後の女性に投与すると新規推体骨折(既存推体骨折なし)のリスクをプラセボ群と比較して55%低下させた。
・エビスタは、非椎体骨折防止効果のエビデンスは少ない(実績が少ない)が、椎体骨折に関してはビスフォスフォネートに勝るとも劣らない。
・エビスタ服用後の継続率は、「96%」と高く、食事や時間に関係なく服用できる。
・副作用に「ほてり」が生じる場合があるため、閉経後に「ほてり」を訴える骨粗鬆症患者には、エビスタは控えた方がよい。
・2006年骨粗鬆症治療ガイドラインでは、骨量がYAM(若年成人の平均値)70%未満であれば、薬物治療を開始する。 YAMが70%~80%未満で、閉経後の女性もしくは50歳以上の男性では、① 過度の飲酒(飲酒により骨の働きが抑えられる)、② 喫煙(女性ホルモンを低下させカルシウムの吸収を妨げる。)、③ 両親のいずれかが大腿骨を骨折している。 ①、②、③ のいずれかひとつを伴う場合は、薬物治療を開始する。
・背推体の骨折は、猫背になりやすく内臓が圧迫して、骨折後の予後が悪い。また、寝たきり原因の第3位は、転倒・骨折であり14.8%である。
・閉経後は、エストロゲンの欠乏が起こり、骨代謝回転が亢進し、ビタミンDが低下するため、骨粗鬆症になりやすい。
・骨のリモデリングは、1サイクル 3ヶ月 ~ 半年である。
骨吸収 :破骨細胞によって骨が分解され、カルシウムは血中へ(多くの骨粗鬆症の治療薬が骨吸収抑制剤である。)
骨形成 : 血中のカルシウムが骨に沈着して新しい骨を形成する。(骨形成を促進させる薬剤は、今のところない。)
骨吸収抑制剤 : ビスフォスフォネート系薬剤「A」,塩酸ラロキシフェン(エビスタ錠)「A」、カルシトニン製剤「B」(特に骨粗鬆症による腰痛に有効である。 筋肉注射)、女性ホルモン「C」。 ランク :「A」強く勧められる。「B」勧められる。「C」勧められるだけの根拠が明確でない。「D」勧められない。
・最近の知見では、カルシウムが不足すると転倒しやすくなるとの報告がある。転倒防止には、ビタミンDを服用してカルシウムの吸収を高めて転倒を防止する。
・リウマチのステロイド投与患者には、ビスフォスフォネート系薬剤が第一選択薬であり、エビスタは投与できないわけでないが実績が少ない。
・エビスタは、閉経後の女性透析患者の骨粗鬆症に対しても実績があり、透析装置による影響もない。