薬剤師修行ファイルNo.071004:ゼチーア、動脈硬化性疾患

2007年10月研修記録
★血清脂質の新しいパラダイム~コレステロール吸収制御の観点から~
・1989年に日本で初めてスタチン製剤(メバロチン)が市販された。18年ぶりに今年から新しい作用機序のコレステロール低下剤であるゼチーアが市販された。
・スタチン製剤は肝臓でのコレステロール合成阻害作用であるが、ゼチーアは小腸でのコレステロールの吸収を強力に、かつ選択的に阻害する。
・スタチンの用量は日本と海外で異なり、日本は低用量で使用しているが、ゼチーアは日本と海外で同じ10mgで使用されている。また、ゼチーアの用量設定試験において、10mgと20mgでLDL-Cの低下作用はほぼ同じであり、増量の効果はない。なお、添付文書で「1回10mgを1日1回食後経口投与する。なお、年齢、症状により適宜減量する」と記載されている。腸管循環で長時間作用するため、必ず1日1回の服用になる。消化器症状の副作用があるため、食後服用が良い。
・ゼチーアは日本では単独投与(高薬価のため、患者負担考慮)が推奨されているが、海外ではスタチンとの併用がゼチーア単独より多く使用されている。
・ゼチーアは1日1回食後服用になっており、朝食後、昼食後、夕食後で効果に差はなく、いつ服用しても良い。
・ゼチーアはスタチンとの併用で効率的にLDL-Cを低下させる。「リピトール80mg」と「リピトール10mg+ゼチーア10mg」でLDL-Cが約53%低下できる。副作用を考えるとリピトールとゼチーアの併用が良い。スタチン単独では6%ルールがあり、2倍増量してもLDL-Cは6%程度しか低下しないのが現状である。ゼチーア単独ではメバロチンと同等のLDL-C低下効果がある。
・ガイドラインにおけるLDL-Cの目標値において、スタチン単独では100mg/dl以下の目標達成率は約29%、120mg/dl以下の目標達成率は約50%しかないため、ゼチーアとの併用が推奨される。
・ゼチーアはグルクロン酸抱合であり、ほぼ糞中排泄になるため、腎機能が低下している高齢者に適している薬剤である。また、肥満患者や糖尿病患者により効果があると言われている。
・ゼチーアはスタチンとの併用時のTG低下率はスタチン単独時に比べ、有意な低下が認められた。また、HDL-Cへの影響についても、ゼチーアとスタチン併用投与により、スタチン単独時に比べ上昇効果が認められている。ただし、作用機序は明確になっていない。
・ゼチーアは市販されて4ヶ月が経過しているが、横紋筋融解症などの重篤な副作用は報告されていない。しかし、体内に吸収される薬剤であり、今後も副作用には注意する必要がある。
 
★動脈硬化性疾患予防ガイドライン改訂のポイント
・日本動脈硬化学会では動脈硬化性疾患診療ガイドライン(2002年発行)を改訂し、名称も新たに「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年版」として発表した。今後の医療は「診療」から「予防」が重視されるため、名称変更している。
・予防が重視されており、薬物治療の前に生活習慣を改善させる必要がある。肥満患者には体重を5%減量することで臨床検査値がかなり良くなる。
・薬剤師修行ファイルNo.070825とほぼ同内容のため、省略。