薬剤師修行ファイルNo.071129:メタボリックシンドローム

2007年11月研修記録
★脳梗塞の再発予防戦略-JELIS脳卒中サブ解析の結果から
・JELIS(The Japan EPA Lipid Intervention Study)は日本で実施された「高純度EPA製剤」(エパデール)の冠動脈疾患に対する長期的効果を検討した大規模臨床試験(登録患者18500人、参加医師約5000名、試験実施期間5年、追跡率91%)である。
・JELISの概要は、総コレステロール250mg/dl以上の高脂血症患者状を対象に、スタチン系薬剤単独群(メバロチン又はリポバス)とスタチン系薬剤+EPA(エパデール)の効果を検討しており、高純度EPA製剤を用いた世界初の試験である。結果はEPAを上乗せすることで冠動脈イベントを19%減少させた。
・脳卒中再発を来した症例は、EPA群では33例(6.8%)、対照群48例(10.5%)であり、EPA群では対照群に比べて有意に、20%の再発抑制が認められた。
・EPAの多方面にわたる薬理作用とし、抗血栓作用、血清脂質改善作用(TC、TG、LDL、VLDLの低下)、接着因子の抑制、抗動脈硬化作用(血管内皮細胞機能の改善、プラークの安定化)及び抗炎症・免疫調節作用などが認められている。

★メタボリックシンドロームの本質
・心血管イベントの危険因子にはLDL-コレステロール、メタボリックシンドローム(ウエスト周囲径、高TG、低HDL、血圧)及びその他の因子(喫煙、肥満等)が考えられる。メタボリックシンドロームの診断基準にはないが、インスリン抵抗性と心血管イベントの関連性が注目されている。
・インスリン抵抗性が出る要因として、遺伝、肥満(インスリンの働きを良くするアディポネクチンが出なくなる)、運動不足、高脂肪食(特にハンバーグなどのファーストフードに含まれている飽和脂肪酸がインスリン抵抗性を来たしやすい)及びストレスがある。
アディポサイトカインは脂肪細胞から分泌される生理活性物質の総称で、内臓脂肪蓄積により分泌異常が起こる。アディポサイトカインの研究が各方面(大学、製薬会社等)で行われており、将来的には新薬の開発に繋がると思われる。
・現在の体重を5%減量すると、臨床検査値は良くなるとよく言われている。その理由として、HbA1cは10%の減量で1.6低下、5~9.9%の減量で0.6低下するが、2~4.9%の減量で0.2増加し、1.9%以下の減量では0.6増加することが認められている。
・子供の肥満が問題となっており、肥満児の割合は30年前と比較して、3倍増加しており、日本の長寿が危険である。なお、遺伝的な要因を調査した結果、両親が肥満の場合、子供は約50%が肥満になり、両親が肥満でない場合、子供は約6%が肥満になる。また、父親が肥満の場合、子供は約8%が肥満になり、母親が肥満の場合、子供は約13%が肥満になる。肥満に関しては、父親よりも母親の遺伝的要因が影響する。
・来年度から特定検診・特定保健指導が実施される。40歳以上で生活習慣病の可能性がある患者が対象になるが、健康日本21の考え方に基づいている。
・スタチン系薬剤とフィブラート系薬剤の併用は、腎機能が低下している患者には黄紋筋融解症の危険性が高まるため、原則併用禁忌として添付文書に記載されている。しかし、日本で市販されているスタチン系薬剤とフィブラート系薬剤を併用しても黄紋筋融解症の危険性が高まるとのエビデンスはない。添付文書で記載されているのは海外での特殊製剤での事例である。現在調査中であるが、原則併用禁忌の記載は、1~2年後には添付文書から削除される。

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