薬剤師修行ファイルNo.070217:薬剤師のための漢方セミナー

2007年2月研修記録
★一般市中病院での漢方エキス剤治療 ~ 産婦人科領域を中心に ~ 
・相補・代替医療(complementary and alternative medicine、CAM)とは、主に欧米で国又は医学会で認知されていない療法の総称である。CAMは近年、統合医療とも呼ばれている。米国では漢方治療は正式な医療としては認められていない(保健適用ないため、CAMになる)が、約42%の国民がCAMを受診しており、漢方治療も増加している。
・漢方は女性に向いていると言われており、産婦人科では多く使用されている。漢方治療が優先される疾患には月経不順、不正性出血、月経前緊張症、月経困難症、更年期障害、冷え症などがある。
・女性はほとんどが瘀血(血の停滞)になっており、外来では「桂枝茯苓丸」、入院では「当帰芍薬散」が多く使用されている。桂枝茯苓丸は血液粘度、赤血球集合能、赤血球変形能を改善することが明らかになっている。また、動脈硬化抑制作用、血管内皮機能保護作用も認められている。
・出産で最も多く使用されている薬剤にウテメリン(早産防止剤)があるが、「当帰芍薬散」を併用することにより、ウテメリンの効果を増し、副作用の防止にもなる。また、不妊治療剤にクロミッドがあるが、「温経湯」を併用することにより効果が増す。
・甘草によって引き起こされる高血圧、浮腫、低カリウム血症は甘草誘発性偽アルドステロン症と呼ばれている。西洋薬との併用では、グリチルリチン酸製剤以外にも利尿剤(ループ、サイアザイド)がグリチルリチン酸と同様の機序でカリウム排泄を促進するので、併用した場合、低カリウム血症に注意が必要である。甘草は1日6~7gまでと言われている。
・麻黄は、中枢神経興奮、交感神経刺激などの作用を示す。西洋薬との併用に当たってはエフェドリン含有製剤、カテコールアミン製剤、モノアミン酸化酵素阻害剤、キサンチン製剤、甲状腺ホルモン剤などにより動悸、発汗過多、脱力感、頻脈、不眠、興奮などが生じる。高齢者では若年者よりも副作用が生じやすい。1日量の制限は個人差があり、数字で示すことはできない。また、麻黄とアセトアミノフェンの同時服用はほとんど意味がなく、時間をずらして服用するべきである。
・調剤薬局において、漢方は好まれていない。その理由として、場所を取ることや処方変更が多く、在庫が多くなり、経営効率が良くないためである。漢方エキス製剤145処方すべて置いている調剤薬局はない。
・保健診療上原則として複数の漢方エキス製剤の同時投与は望ましくない。2剤を併用することによって漢方診療の幅が広がることも確かである。しかし、3剤以上の同時投与は支払い基金より制限されることがある。

★6年制薬学における生薬研究 ~ 食品と生薬修治 ~
・生薬の修治(加工調整)は日本ではあまり行われていないが、中国ではよく行われており、大学の単位にもなっている。
・修治の目的と意義として、①毒性や刺激性など副作用の軽減、②生薬性能の改変、③薬効の増強、④保管、貯蔵における変質や虫害の防止、⑤矯味及び矯臭、⑥非薬用部分の除去、⑦粉砕性の向上などがある。
・修治方法には ①治削(夾雑物の除去)、②水製(水を用いて処理する方法で雑物を洗浄する)、③火製(焦がす、炒る、焼く及び炭化などの操作)などがある。
・生薬修治には、附子があるが、附子の毒性を水製と火製で減弱させている。また、修治における化学過程として、8位の脱アセチル化がある。