薬剤師修行ファイルNo.080124:スピリーバ

2008年1月研修記録
スピリーバの製品紹介【日本ベーリンガーインゲルハイム㈱より】
スピリーバは、2004年12月に日本で販売を開始した慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療剤である。COPD患者の息切れなど臨床症状を改善し、健康関連QOLを向上させる。また、COPD患者の肺機能を上昇させ、1年間投与においても減弱しない。海外では75カ国以上で発売されている。
・スピリーバは1日1回投与を可能にした初めての長時間作用型吸入気管支拡張剤である。

<Q1>吸入はエロゾルタイプとドライパウダータイプがあるが、ドライパウダータイプにした理由は?
<A1>COPDの治療には選択性の高い抗コリン剤を呼吸器の終末部に直接投与する方法が有効である。そのためには2~3μm(ミクロン)以下にする必要があったが、エアゾルタイプでは、開発当初は5~10μm程度であり、COPDの治療要件を満足できなかった。先に開発に成功したのがドライパウダータイプである。エアゾルタイプも開発の目処がつき、臨床試験中である。
<Q2>25℃を超えるところに保存しないことになっている理由として、40℃、75%RH、6箇月保存の加速試験において、不純物がかなり増加するためとなっているが、具体的な数字は?
<A2>弊社の規格では、不純物の含量は7%以下としているが、40℃、75%RH、6箇月保存で不純物の生成量が7%をわずかに超えた。このことから、夏場において、スリピーバは冷蔵庫保存が望ましい。
<Q3>第Ⅲ相臨床試験の用量は、36μgで実施しているが、製品は18μgにした根拠は?
<A3>第Ⅲ相臨床試験において、副作用の発現率は用量に依存して増加したが、効果は18μgと36μgの双方で有意差はなかった。このことから、用量は18μgに設定した。(日本の開発において、第Ⅲ相臨床試験の用量と異なる用量で市販されることはほとんどない。第Ⅱ相臨床試験での用量設定試験が不十分なのか、導入品のためなのか、最近、厚労省とのヒアリングで第Ⅲ相臨床試験の用量よりも低用量で市販されている製品が多いのも現状である。)
<Q4>気管支喘息に効果はありますか?
<A4>抗コリン剤は効果発現に時間がかかり、気管支喘息には不向きとされている。気管支喘息に対する効果は充分に試験していないため、エビデンスはない。
<Q5>心拍数の増加と循環器系の副作用は?
<A5>抗コリン剤の副作用として、心悸亢進が知られているが、スピリーバはM3選択性の抗コリン剤を作用部位に少量・直接に吸入投与する薬剤であり、循環器系の副作用の発現率は極めて低い。また、心拍数の増加は通常は認められていない。
<Q6>誤って内服した場合の副作用は?
<A6>成分により薬理作用に強弱があるが、通常の抗コリン剤(経口剤)の用量は大体10~20mgであり、スピリーバは18μgのため、約1000倍近い開きがあり、1カプセル誤飲してもほとんど無作用である。ドイツにおいて、認知症の高齢患者が約50カプセルまとめて誤飲した事例があったが、この時発現した副作用は便秘であり、浣腸処理により回復した。
<Q7>肺への到達度は何%程度ですか?
<A7>COPD患者は呼吸機能が低下しているが、スリピーバは専用の吸入器具「ハンディヘラー」を用い、カプセル内の成分を極めて微量とし、また、薬剤を極度に乾燥・軽量化し、確実に薬剤が吸入できるように製剤設計しており、肺への到達度は約60%である。