薬剤師修行ファイルNo.080216:呼吸器疾患臨床研究会

2008年2月研修記録
★クラリシッドの最近の話題【アボットジャパン㈱学術部より】
・急性の咳嗽の原因は、多くの場合呼吸器感染症であり、急性呼吸器感染症患者30例にクラリシッド200mg1日2回を7日及び14日間投与した結果、咳嗽の消失80%、客痰の低下76%と高い臨床効果が認められている。
・成人や高齢者の百日咳感染者が、ワクチン未接種者の感染源となることが注目されている。百日咳はグラム陰性桿菌である百日咳菌の感染であり、鼻咽頭や気道からの分泌物の飛沫感染及び接触感染である。百日咳菌に対してクラリシッドは高い除菌効果がある。
・クラリシッドが高い臨床効果を示す理由として、マクロライド系抗生物質の中で強い抗菌力があり、呼吸器系組織(肺組織)への移行が優れているためである。また、酸にも安定であり、胃酸によって分解されない。

★成人慢性咳嗽と百日咳
慢性咳嗽とは一般的には8週間以上続く咳である。咳はその持続期間によって、急性、亜急性、慢性と分類され、3週間までが急性、8週間以上が慢性、その間が亜急性になる。咳には痰を伴った湿性咳漱と伴わない乾性咳漱があるが、問題になるのは乾性咳漱である。
・慢性咳嗽の三大原因として、後鼻漏(鼻水が口腔内に流れ出てその刺激で咳が出る)、咳喘息(普通の喘息のように喘鳴はないが、鎮咳剤は無効で、喘息治療剤が有効な咳)及び胃食道逆流による咳がある。その他にはACE阻害剤服用による咳がある。
・臨床的によく遭遇するのは感染後に起こってくる咳嗽である。原因として最も多いのは、かぜ症候群であるウィルスによるものであるが、その他にもマイコプラズマ、肺炎クラミジア感染による咳が報告され、百日咳菌感染による咳もここに分類される。
・百日咳というと今まででは小児の病気として成人ではあまり注目されていなかったが、最近、成人での感染報告がみられ、慢性咳嗽の一つの原因として注目されている。
・百日咳感染症者は他の慢性咳嗽に比して年齢が若く、また末梢血の白血球数が多く、とくに好中球が有意に多い。成人における百日咳の臨床症状は小児での典型例と異なり、激しい咳、時には嘔吐や眼瞼結膜の出血などを伴うような症状を欠くので診断が困難である。そのため、百日咳と診断されず、乳幼児への感染源になることが問題である。
・百日咳の薬物療法として、第一選択が経口マクロライド薬で罹患して1~2週間以内に服用すれば症状が軽減されるが、服用が遅くなると効果は弱くなる。ワクチンが無い時代では罹患率10万人あたり約200人と高かったが、ワクチン導入で10万人あたり約2人と激減した。しかし、ワクチンの効果は約10年であり、抗体価が下がってくる思春期や成人での発症が問題になってきている。ワクチンの再接種も必要になってくる。
・百日咳の診断方法として、抗体価測定(百日咳毒素である東浜株、山口株が約4倍上昇すれば百日咳と診断可能)は正確で簡便であるが、測定結果に時間がかかるため、今後はより簡単で、早期に診断できる方法が必要になる。家族の感染があるため、受診した患者以外にも家族の状況を把握する必要がある。
・抗生物質の適正使用(耐性化の防止)のため、セフェム系薬剤の使用量は、10年前と比較して約40%まで減少している。